
たいやき ともえ庵では秋から春にかけて、つまり気温が高くない時期に「お赤飯」を売っている。
どうしてたいやき屋が赤飯を売るのか、尋ねられた時には「小豆のゆで汁を無駄にしないため」と説明している。
これは事実なのだが、実は他にも理由がある。
赤飯を始めた直接的な理由は、調理師の受験資格を得るためだ。
以前にスタッフが調理師の資格を取得したいと言ってきたことがあった。
調べてみると、専門学校に行かずに調理師の試験を受けるには「中学校卒業以上で、飲食店や給食施設などにおける2年以上の調理業務経験」が要件だった。
ところが詳しく聞いてみると、やっかいなことにこの「飲食店や給食施設」は食事を出すところという意味らしい。食事ではない菓子を作ってるたいやき屋は対象外、ということ。経験が何年あってもパティシエは調理師資格を受験することができないのだ。
さらに詳しく調べると、メニューの中にひとつでも食事になるものがあればOK、ということがわかった。ケーキ屋さんで働くパティシエでも、その店でパンを品揃えしていれば対象になるとのことだった。
そこで、たいやき屋が出せる食事メニューということで、小豆つながりの赤飯を思いついた。
ちゃんとした和菓子屋さんではないので、せいろで蒸して作ることはできないので、炊飯器で炊く。その代わり、ともえ庵らしさとして、青実山椒の塩漬けを散らして、少し刺激のある味に仕上げた。
さらに、少しだけつぶあんを添え、最後のひと口は赤飯にあんこをのせて”おはぎ”のように食べてもらえるようにした。他にはない「たいやき ともえ庵のお赤飯」だ。
大ヒットメニューにはならないが、赤飯のファンになって下さるお客さんも徐々に増え、冬場の定番になっている。
でも、それ以上に嬉しいのは、その後、スタッフが調理師の資格を取得したことだ。資格の取得は彼女の自信になり、店にも良い影響を与えてくれた。
ひとりのスタッフがやりたいことを実現すると、店も良くなる。
そんな店の運営を続けていきたい。
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