
毎朝8時からあんこを炊いている、という話をすると意外そうな顔をされる。
多くの人のイメージの中では、和菓子屋さんの朝は早く、まだ暗いうちから時間をかけてあんこを炊き、和菓子をこしらえているのだろう。
和菓子屋さんの朝が早いのは事実だ。
手土産などに使われることが多い和菓子屋さんは、開店時間が早い。その時間には出来上がった和菓子が並んでいる必要があるので、基本になるあんこは、早朝のうちに出来上がっている必要がある。
でも、たいやき屋は事情が違う。
買ってすぐに食べる人が多いたいやきは、朝早くから買いに来る人はあまりいないし、焼きながら売るので、開店時間に商品が並んでいる必要もない。
むしろ、焼き立てを食べてもらいたいのだから、出来上がっていてはいけない。
だから、ともえ庵の朝は8時から始まる。
あんこを炊き、小麦粉を混ぜ、季節によっては赤飯を炊いたり、かき氷のシロップを仕込んだりする。
その準備が終わると、今度は店を開ける。
たいやきを焼き、お客さんと話し、気が付けば昼になっている。
交代で昼休憩をとって仕事に戻り、気付けばもう夕方だ。
営業時間中も手が空くことは少ない。
材料を仕込んだり、白玉を作ったり、「たいやきの開き」を作ったり、袋にスタンプを捺したり。
仕事は次から次へとある。
だから、ともえ庵では仕込みの時間を除いてワンオペのシフトは組まない。
平日は2人、週末は3人が基本だ。
誰かに相談できるように。
困った時に助けてもらえるように。
ただ、それは楽をするためではない。
少しでも熱いたいやきをお渡しするため、少しでも冷たいかき氷をお出しするため、美味しさのために、みんなで忙しく動いている。
始まる時間は少し遅い。
でも、その分、働き始めると時間が経つのは驚くほど早い。
ともえ庵は、そんな店である。
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