
「毎月10日はともえ庵の日」をキャッチフレーズに、10日にはたいやきを少しお得に提供している。
お正月期間で鏡開きの前日になる1月10日と、阿佐ヶ谷七夕まつりの日程にかかるか開催直後になる8月10日には休止させていただいているが、阿佐ヶ谷に移転してきてから、新型コロナウィルスが蔓延していた時期を除いて、年間10回程度はずっと続けている。
10日という日に実はあまり理由はない。ともえ庵の「と」と十日の「と」がかかっている程度だ(笑)
それでも続けていると、お客さんも覚えてくれるし、それに合わせて月替りたいやきも毎月11日~翌月9日に設定し、「ともえ庵の日」を区切りに店が回っていくようになっている。
実は「ともえ庵の日」の目的は売出しではない。
確かにたいやきをお得に出してはいる。2026年現在は通常価格300円のたいやきを150円(おひとり3匹まで)にしているので、値段の魅力でたくさんのお客さんにお越しいただいている。
しかし、たいやきを半額で出す上、白玉たいやきや、月替りたいやき、季節のたいやきなどの少し値段の張るたいやきを休止しているので、売上は通常営業の日より少なくなることもある。特に寒い季節の土日に重なると、確実に売上が落ちてしまう。
それでも、たとえ土日に重なっても「ともえ庵の日」を続けるのは、「毎月10日」を当たり前のものとして定着させたかったから。
続けている効果はすごいもので、「ともえ庵の日」を始めた十数年前には、数日前からポスターやSNSで告知して集客していたのが、今では当日にポスターを貼るだけで当たり前のようにお客さんが来てくださるようになった。
実は、「ともえ庵の日」の本当の目的は「スタッフのトレーニング」だ。
たいやきを1種類に絞り、たいやき以外のメニューも出さないようにして、ただただたいやきを焼くことに集中する。お客さんは常に並んで待って下さっているので、焼いた瞬間に売れていく。
こんな環境の中で、正確に早く焼くことに挑戦して実力を伸ばす。「ともえ庵の日」はそんな日だ。
普段は達成すべき売上目標などを設定しない店だが、「ともえ庵の日」だけは、売上ではなく、何匹焼けるかという数字を全員で追っている。
新人スタッフは満足なスピードが出せず、落ち込んだりもしているが、最初のうちは自分の無力さに逃げずに向き合うことも重要。成長のための良い機会になっている。実際に新人は「ともえ庵の日」を経ることで、目に見えて実力を高めている。
そして、ある程度経験を積んだスタッフにとっては、先々月、先月の自分と闘いだ。過去の自分を超えて殻を破る日にすべく、それぞれが頑張っている。
「ともえ庵の日」で正確に早く焼けるようになると、冬場や週末、たくさんのお客さんがお越しになった時に素早く、落ち着いて対応できるようになり、店の地力になっていく。
もちろん、スタッフの成長以外にも、安くすることで地域への還元になったり、ともえ庵を試してもらう日機会にもなっているが、それらは店にとっては副産物に過ぎない。
でも、スタッフそれぞれが殻を破ることは、よりたくさんのお客さんにお出しして、ともえ庵のことをたくさんの人に知ってもらえることにつながっている。
← 第19回 「何もできない人でいい」 | 目次
