たいやき ともえ庵で働くということ(5) 【最短で一丁焼きのたいやきが焼ける店】

たいやき好きな人からは「天然もの」とも呼ばれる一丁焼のたいやき、それを焼く技術は簡単に身に付けられるものではないと思われているが、そうではない。

おそらく、たいやき ともえ庵は最短で一丁焼きのたいやきを焼けるようになる店だ。

理由はふたつ。
ひとつは、採用してすぐに焼き方を教え始めること。
もうひとつは、ともえ庵独自の焼き方の練習方法があるからだ。

■ともえ庵ではすぐに焼く練習を始める
ある老舗のたいやき屋さんは「どこで経験してこようと、最初の1年はたいやきを焼かせない」と言うらしい。まずは掃除や下働き、接客を経て、店の哲学や在り方を感じてから、焼きを教える。一理ある話だ。

でも、ともえ庵はそうではない。まず接客をさせてみて、お客さんに対する気遣いの気持ちがあると確認したら、すぐに焼く練習に入る。
いちばんやりがいのある仕事をできるだけ早くできるようになり、仕事の楽しさを知ってほしいと思っている。
片付けは日々の業務の中で覚えるし、仕込みは焼けるようになってから覚えればいい。まずは焼きが優先だ。
そもそもたいやき屋に応募してくる人は焼いてみたいと思って来ているのだから、その期待に早く応えたいという気持ちもある。

■独自開発の指導、練習方法
ともえ庵の練習方法は、世の中に新型コロナが蔓延していた時期に開発したものだ。ちょうどその時期にテレビドラマで、舞台になるたいやき店の監修を頼まれ、主演の女優さんや店主役の俳優さんに「焼いている風の演技」を教える中機会があった。限られた時間の中で動作を教える方法を工夫する中で、店のスタッフの練習方法の改善を思いついた。
焼くための一連の動作を教えて練習するのではなく、焼く動作を分解し、ひとつの動作を繰り返し練習して、次の動作の練習に移る。これをすることで身に付けるスピードを格段に早めつつ、品質も上げることができるようになった。

一般に一丁焼のたいやきが焼けるようになるのは、練習を始めて2~3か月と言われる。ともえ庵でも同じくらいだったが、指導、練習方法を変えてからは10日~2週間で、お客さんにお出しできるレベルのたいやきを焼くことができるようになった。

もちろん、この段階で一人前になっている訳ではない。焼いたたいやきをお客さんに出すことはできるが、スピードはまだまだ。お客さんが少ない時間に焼き台に立ち、忙しくなると先輩スタッフに代わってもらう。
それでも、練習のための練習ではなく、お客さんにお出しするという責任感と緊張感が、さらに新人を成長させてくれる。

混んだ時間に出せるスピード。焼きながら材料やお客さんの動きに気を配ること。トラブルへの対応など、一人前への道は遠いが、「焼き手」してのやりがいを感じながら、そこまで成長できるので、以前より仕事の楽しさは増している。

正直なところ、人手不足という事情もあり、早く仕事を覚えてもらう工夫をしてきた面も否めない。でも、やってきてはっきりわかるのは、仕事を早く覚えることは、店だけでなく、本人もお客さんも、すべてを幸せにすることにつながるということである。

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