この文章を書いている当日(2017年6月29日)から発売している「落花生と自家製練乳の氷」について紹介します。
落花生はピーナッツとも呼ばれ、おやつやおつまみに食べられることが多いのですが、実はかき氷にかなり合う素材です。
かき氷は、この落花生をペーストにして甘さを抑えた自家製練乳と混ぜた、風味とコクがあるものになっています。さらに、食感を楽しんでいただくため、かき氷の上には粗く砕いた落花生を散らして仕上げました。
■落花生(ピーナッツ)は、本当はナッツではありません
ナッツは木の実のことを指します。アーモンドやマカダミアナッツ、ピスタチオなどです。それに対して落花生は、ピーナッツと呼ばれ、“ナッツ”のように聞こえますが、木に実るものではなく草の種です。植物としてはマメに分類されるものですが、性質が近いことから食用としてはナッツの一種と受け止められています。
もともとは南アメリカ大陸が原産とのことですが、その後、アフリカ、ヨーロッパ、アジアと広がって、16世紀初頭には日本にも持ち込まれたそうです。現在、食されているのは明治時代に持ち込まれた品種とのことです。
■落花生は脂肪分が多いマメ
マメ科の植物は以下のように分類されています。
・インゲンマメ属
・ダイズ属
・ササゲ属
・ソラマメ属
・エンドウ属
・ラッカセイ属
名称がわかりやすいので、イメージもしやすいと思います。インゲンマメ属にはインゲンマメ種(手亡、うずら豆、虎豆など)とベニバナインゲンマメ種(白花豆など)が含まれます。
また、たいやきに使う小豆は、ササゲ属のアズキ種に分類されます。なお、ともえ庵で使っている小豆については、過去のブログ記事「たいやきの餡 ~小豆と仕込みの話~」をご覧ください。
栄養成分から見ると、含まれる成分により豆は以下の3つに分けることができます。
・炭水化物が多いグループ:小豆、いんげん豆、空豆、えんどう豆
・たんぱく質が多いグループ:大豆
・脂質が多いグループ:落花生
多くの豆は炭水化物が多いのですが、大豆はタンパク質を、落花生は脂質を多く含んでいるのです。
参考「べにや長谷川商店の豆図鑑」(自由国民社)
■地中で育つから“落花生”
上にも書いたように落花生は草、一年草です。ただ、面白いのは独特な結実の方法です。
花が咲き、受粉した落花生は、数日後から下に伸び、地中に潜るのです。なので、落花生の実はまるで根っこにくっついているように地中から掘り出されます。この育ち方が落花生の名前の由来にもなっています。
■かなりお高い国産落花生
落花生がお好きな方ならご存知だと思いますが、国産の落花生は輸入物に比べてかなり高価です。小売価格だと、殻つき300g入の袋が1000円以上することも珍しくありません。この価格は、中国産を中心とする輸入物の数倍もします。
国産の落花生と中国産のものを比べると、意外にも粒が大きく形がきれいなのは中国産です。国産のものは粒が揃わず、小さいのですが、その分、食べ比べると誰でもわかるほど、味に違いがあります。コクがあって甘みが強いのが特徴です。
最高級とされているのは半立(はんだち)という種類の落花生で、千葉県八街産のものが特に有名です。
■ピーナッツバターに“バター”は入っていません
パンに塗って食べるピーナッツバター、こってりした濃厚な味が美味しいスプレッドです。多くの人が落花生(ピーナッツ)にバターを混ぜて作られていると思っているのですが、実はあのこってりした味は落花生自身の脂質によるもの、バターなど乳脂肪分は一切含まれていません。
落花生をペーストにする機械にかける際に、多少の油分があったほうがペーストにしやすいということもあり、植物油が少しだけ加えられている場合もあるようですが、味は基本的に落花生の脂質によるものです。FDA(アメリカ食品医薬品局)では、原材料の90%以上にピーナッツを用いたものを「ピーナッツバター」と定義しているそうです。
ピーナッツバターに砂糖や水あめ植物油、脱脂粉乳等を加え、よりなめらかに仕上げたものがピーナッツクリームです。原材料がほぼ落花生のみのピーナッツバターは風味に優れる反面、堅くなりやすいため、他の材料を加え、さらには子供にも食べやすいように甘く仕上げたのです。
ピーナッツバターにバターが含まれていると思っている人が多いのは、その名前と、このピーナッツクリームのイメージからかもしれません。
■落花生のかき氷を作った理由
いくつかの有名なかき氷屋さんで、ピスタチオを使ったかき氷が出されており、人気になっています。
実際に行って食べてみると確かに美味しい。でも、ピスタチオの風味がそれほど好きでないこともあり、別のナッツで作っても面白いのではないかと思っていました。たいやきの店であるともえ庵は、基本的には“和”の食べ物や飲み物を提供したいと思っているので、ナッツであれば、千葉県に根付いている落花生だろうと考えていたのです。
もうひとつのきっかけは、偶然、国産の落花生を原材料にした無加糖のピーナッツバター(ピーナッツペースト)を見つけたことです。上でも書いたようにピーナッツクリームが中心に普及しているので、きっと探せばあったのだと思いますが、国産無加糖のピーナッツバターを食べたことがなかったのですが、初めて食べてみて、これはかき氷に合うと確信しました。
店で試しにかき氷にしてみると、思った通りの味。通常は、分量の調整を何回も繰り返すのですが、この時は本当に一発目から美味しく仕上がりました。
■国産の落花生から作ったシロップ
でも、他所が作ったペーストからシロップを作るのはうち本意ではありません。次に殻つきの落花生や、殻をむいた状態の落花生(ピーナッツとして袋入りで売られているようなもの)を仕入れ、潰すところからやってみました。
正直、もっと手間取るかと思ったのですが、落花生の粒を自家製の練乳と一緒にブレンダ―に入れて混ぜてみると、すぐにペーストと練乳を合わせたものと変わらないものができました。ただし、今度は分量や落花生の潰し具合を調整しなくてはならないので、何度も混ぜる割合や撹拌時間を変えて試し、レシピ化していきました。
問題は、国産の落花生の仕入です。先ほども書いたように、国産落花生は結構高いので、その値段を元にかき氷にすると、うちの店には合わないくらい高いものになってしまいます。
仲良くしている千葉の問屋さんにお願いして探してもらったところ、粒が割れたり欠けたりした加工用の落花生があることを紹介していただきました。もちろん、国産の落花生、すべてが千葉県産ではありませんが、千葉県とその周辺で栽培されたものだそうです。品種は、最高級の半立(ハンダチ種)と中手豊(ナカテユタカ種)の混合とのことでした。
粒が揃っていないことや欠けていることは、シロップを作るのでまったく問題はありません。試作してみると、最高級の半立だけで作ったものに比べるとわずかに劣るものの、ほとんどの人が見分けられないレベルだったので、この加工用の落花生を使うことにしました。
※2018年6月追記:原材料の落花生がすべて千葉県産になりました。
2018年の「落花生と自家製練乳の氷」は、原材料の落花生を千葉県産のものに限定しています。これまでも、「千葉県産+隣接県産」だったので、それほど大きくは変わりませんが・・・。
品種は同様に、最高級の半立(ハンダチ種)と中手豊(ナカテユタカ種)の混合です。
■氷の味を楽しめるシロップに仕上げています
落花生を潰して混ぜたシロップなので、うちで通常使っている果物等のシロップよりもこってりとした濃厚なものになります。
ただし、ともえ庵は「かき氷は氷が主役であるべき」というのが信念ですから、かき氷に浸み込むシロップに仕上げました。(参考:「食べて気持ちの良いかき氷 ~氷について~」)
正直に言うと、これも悩んだところです。あえて濃厚に仕上げて、落花生の美味しさを楽しめるものにする、という方法も魅力的だったからです。
しかし、濃厚なシロップに合わせるためには、氷をやや粗めに仕上げなくてはなりません。本気で薄いかき氷はすぐに溶けて濃厚なシロップに負けてしまうからです。やはり氷そのものの魅力を犠牲にはできないと考えて、氷に浸み込むぎりぎりの濃さにしました。
その分、落花生を砕いてかき氷の上に散らして、食感の違いを楽しんでいただけるように仕上げてあります。
このようにして作った「落花生のかき氷」、開発中に試食でお出ししたお客さんの評判は上々、発売直後に食べていただいたお客さんにもかなり誉めていただきました。
ぜひたくさんのお客さんに試していただきたいと思います。
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