巨峰、ピオーネ、藤稔、ぶどうのかき氷

 先日、人気の「生すいかのかき氷」の提供が終わりました。すいかの旬が過ぎてしまったからです。個人的にはまだ店で買って食べることもあるのですが、個々のすいかの品質がバラつきだしたので、お客さんに出す商品とするにはふさわしくないと判断しました。

 同じ果物のかき氷でも、「廣島大長レモン」や「大分かぼす」のように果汁を使用する柑橘系の果物と違い、生の果実の素材で勝負するタイプのかき氷は、どうしても提供時期か限られます。

 生すいかのかき氷は人気があるだけに、「○○日まで限定」というようにお知らせしようかと考えたのですが、旬を過ぎたものを煽って食べていただくのも変、ということで告知せず静かに終了させていただきました。何度も食べていただいたお客さん、本当に有難うございました。

 その「生すいかのかき氷」に変わって提供させてもらうのが、今回のタイトルにある「ぶどうのかき氷」です。こちらも名前には謳っていませんが、生の果実を使い、手間をかけて作っているシロップです。

■巨峰、ピオーネ、藤稔から作ります

 ともえ庵の「ぶどうのかき氷」は、巨峰、ピオーネ、藤稔(ふじみのり)という品種から作ります。といってもブレンドではなく、この三種類うち、その時期に質の良いものを仕入れることができるものを選び、シロップにしているということです。

 試作段階では、デラウェアやマスカット、シャインマスカットなども試しており、それぞれ美味しいものができたのですが、やはり紫色の果汁が氷に映え、果実に水分が多くてシロップにしやすく、果肉が大きくて加工しやすいという条件でこの三種類に落ち着きました。

 巨峰は、ヨーロッパ系のぶどうとアメリカ系のぶどうをかけ合せて日本で開発した品種のぶどうです。もともとは違った品種名だったのですが、販売される際に商品名として名づけられた「巨峰」が有名になり定着したので、今では品種名も巨峰に統一されているそうです。

 実際に、かき氷にして提供している店の立場でも、「巨峰」という名前のインパクトの強さを感じています。他の品種も美味しい、いえコンディションにもよりますが、美味しさでは上回っていることもあるのですが、名前のインパクトだけは「巨峰」を超えることはないと思います。

 巨峰の最大の産地は山梨県山梨市だそうです。なんとなく甲州市(旧勝沼町)だと思っていたのですが、そうではありませんでした。よく考えると、季節になるとともえ庵に巨峰とピオーネをたくさん送ってくださる古屋さんの農園も山梨市にあります。

 さらに地元の人には失礼かもしれませんが、改めて考えると「“山梨市”って存在したんだ!」と少し驚きました。山梨県の県庁所在地は甲府市なので、深く考えずに山梨という名前の市はないと思い込んでいたからです。色々と山梨市には失礼な勘違いをしていたので、申し訳なく思います。

 さらに余談ですが、ついでに調べてみたところ、日本国内で県の名前と県庁所在地の市の名前が違うのは18道県(東京都を除く、さいたま市を含む)です。その中で、県と同じ名前の市があるのは、栃木市、山梨市、沖縄市だけでした。

 ピオーネは、巨峰とマスカットの混合種です。巨峰よりも香りが強く日持ちが良いのが特徴とされています。出回っているものを見ると、巨峰よりやや粒が大きく感じます。

 藤稔(ふじみのり)は、ピオーネをさらに改良した品種で、神奈川県藤沢市で開発されたことからこの名が付きました。巨峰、ピオーネより粒が大きいのですが、まだ栽培量がそれほど多くないからか値段も高価になっています。

■果汁は皮ごと、果肉は皮をむいてから

「ぶどうのかき氷」のシロップは、皮ごとスロージューサーで搾ったぶどうの果汁をベースに作ります。

皮つきのぶどうから作るのが赤ワイン、皮を取り除いたぶどうから作るのが白ワインということはよく知られていますが、シロップも同様にぶどうのきれいな色を出すためには皮ごと搾ることが必要なのです。また、ぶどうに限らず多くの果物は皮の内側が一番美味しいと言われますから、その点からも皮ごと搾るようにしています。

 搾ったぶどう果汁は、砂糖ベースで作ったシロップで甘さを調整します。他の果物を使ったシロップも同様ですが、どれほど果物の甘みが強くても、もともとが水であるかき氷にかけると味、特に甘みが薄くなってしまうからです。

 さらに、果実の美味しさをそのまま味わっていただけるよう、果実の皮をむいて小さくきざみ、シロップに混ぜています。

■これでもか、というくらいの果汁です!

 ともえ庵の他のかき氷も同様ですが、この「ぶどうのかき氷」も

 口にすると、皮と一緒に搾った果汁の風味を感じながら氷がすっと消え、きざんだ果実を噛むとさらにフレッシュな果汁があふれる、そんなかき氷に仕上がっています。

 加工された100%のぶどうジュースでもかき氷を作ったことがあるのですが、やはり店で搾り、果実を加えているので風味がぜんぜん違います。

 ぜひ、季節の間に召し上がっていただきたい秋の楽しみのメニューです。

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