阿佐ヶ谷でしか買えない「阿佐ヶ谷練乳餅」

 ともえ庵の店頭の冷蔵ケースで冷えている「阿佐ヶ谷練乳餅」は、うちだけしかないオリジナルの菓子です。真っ白でふるふるとした見かけ、冷たくてもちっとした食感、砂糖を抑えたやさしい甘さと練乳のコクが同居する味、他では味わえないものです。

 ともえ庵が阿佐ヶ谷に移転してきた際に、何か地元だけでしか味わえない菓子が作りたいと考え、メニューにしました。

■自家製練乳から作っています

 阿佐ヶ谷練乳餅の主な材料は自家製練乳です。ともえ庵では、もともとかき氷を作るために自家製で練乳を仕込んでいたので、それを使った他にない菓子を他にも作りたいと考え、開発しました。

 実は練乳を作ることはそれほど難しいことではありません。牛乳に砂糖を加え、焦がさないように注意しながらかき混ぜて煮詰める、それだけです。ただ、普通の人は1時間もの間、手を止めずにかき混ぜ続けることはできないので、実質的には日常的に練乳を手作りすることはできません。ましてや、大量に仕込むことは不可能です。

 ともえ庵が自家製の練乳を仕込むことができるのは、加熱攪拌機、通称「あん練り機」があるからです。コンロで熱しつつ、羽が鍋の中をかき混ぜてくれるもので、つぶ餡の仕込みには欠かせない機械です。ともえ庵では、この機械を使ってタイマーで一定の時間煮詰め、仕上げだけ人の感覚で見て調整して、自家製練乳を大量に作っています。

■甘さ控えめのかき氷用の練乳のさらに半分の甘さです

 作っている練乳は、缶詰やチューブで売っているものと比べるとかなり薄めのものです。かき氷に使う練乳について浸み込みやすいように薄く仕上げていることは、以前のブログ記事「食べて気持ちの良いかき氷 ~抹茶、自家製練乳、つぶ餡、基本のシロップの話~」でも紹介しましたが、練乳餅に使うものも同様に薄く仕上げています。さらに、練乳餅に使う練乳は、かき氷用の半分の甘さで作っています。もともとは水であるかき氷にかける練乳はどうしても甘さが薄まってしまいます。それ自体を固めて作る練乳餅ですからかき氷用と同じ練乳を使うと甘すぎる仕上がりになってしまうのです。

■実は「わらび餅」と同じ製法です

 練乳を餅状に固めるのは、甘藷澱粉、つまりサツマイモのでんぷんです。お菓子を作るのが好きな方は気づかれたと思いますが、甘藷澱粉は一般的に売られている「わらび餅」を作るときに使う材料です。

 つまり阿佐ヶ谷練乳餅は、わらび餅の水分を練乳に置き換えて作った餅です。ですので、ぷるんとした口当たりはわらび餅と同様、でも味には練乳のコクがあるという仕上がりになっています。

自家製練乳に甘藷澱粉を加えて練り、バットに移して冷やし固めます。

■「練乳わらび餅」と言わない理由

 阿佐ヶ谷練乳餅自体が他所で売っていないオリジナルの菓子ですから、「練乳わらび餅」とか、「練乳で作ったわらび餅」という言い方の方が伝わりやすいと思います。

 それでも、ともえ庵がそのように表現しないのは、「わらび餅」という言葉にやや抵抗があるからです。

 少しわらび餅について説明させてください。わらび餅は、もともとは蕨粉(わらびこ)から作られていました。ぐるぐる巻いた葉が特徴の山菜のワラビ、あのワラビの根から採れるでんぷんが蕨粉です。ただ、想像がつくと思いますが、ワラビから採れるでんぷんは微量なので、蕨粉は非常に高価なもの、代用として値段の安いサツマイモのでんぷんが使われるようになりました。製菓材料として売られている「わらび餅粉」は、基本的にサツマイモの甘藷澱粉です。蕨粉は、わざわざ「本わらび粉」と記載されています。

ちなみに、よく似たパターンなのが片栗粉です。もともとはユリ科の草であるカタクリの根から抽出したでんぷんをカタクリ粉と言ったのですが、やはり高価なため、現在ではジャガイモのでんぷんが使われています。

 そんな訳で、現在売られている「わらび餅」は蕨粉では作られていません。「本わらび粉使用」をうたっているものもありますが、そのほとんどは大量の甘藷澱粉にごくわずかの蕨粉を混ぜているだけです。ちなみに、本当の蕨粉はやや黒ずんだ色なので、わらび餅も透明には仕上がらないのが特徴なのですが、ほんの少しだけ蕨粉を混ぜたわらび餅でも黒糖を使って黒っぽく仕上げているので、普通の人は見ただけでは区別できません。

 とはいえ、ごく稀にある本当の蕨粉で作ったわらび餅は、かなり高価で、既にメディアにも取り上げられているので普通のわらび餅と間違えることはないと思います。いずれにせよ、原材料の表示を見れば分かることではありますが。

 つまり、現在では、蕨から作っていないものを「わらび餅」と呼ぶことが普通になっているのです。

 時代を経て原材料が変わってしまうことはよくあることです。わらび餅に似た「くず餅」も、もともとの名前は植物の葛から来ていますが、その後、小麦粉を発酵させて作る製法が主流となりました。なので「葛」の文字を使わずに「久寿餅」と表記している店もあります。

 これらの変遷が悪いことだとは思いません。より安価で大量に入手できる材料で作り続けてきたからこそ、今も庶民の菓子として続いているからです。

ただ、ともえ庵として新しい菓子として作る際には、お客さんが勘違いするような名前にはしたくないので、練乳餅とさせていただきました。

■つぶあん、きなこを添えて

 阿佐ヶ谷練乳餅は、冷やしてそのままで美味しく食べていただけます。練乳のやさしい甘さと、“つるん”としつつ“もっちり”とした食感が楽しめます。

 店では、つぶあん、またはきな粉を添えて提供しています。さらに、どちらの味も楽しめるよう、つぶあんときなこの両方を添えた「合盛り」も用意しています。このつぶあんときなこ、どっちが美味しいかとよく尋ねられるのですが、これは好みです。店でも、つぶあん派ときなこ派に分かれているくらいです。

 なお、つぶあん、きなことも練乳餅と一緒に食べていただくのに十分、いえそれ以上の量を添えています。

以前に「合盛り」を買って下さったお客さんから面白い話を聞きました。最初に何もつけずにそのまま練乳餅を食べたところ美味しかったので、半分以上そのまま食べてしまい、気づけばつぶあんときなこが大量に余ってしまったのす。そこで、つぶあんを丸めてきなこをまぶして食べると、それが一品の和菓子になり美味しかったという話でした。

 色んな食べ方が楽しめるのも阿佐ヶ谷練乳餅の良いところです。

 きなこをまぶした阿佐ヶ谷練乳餅、きなこは小袋で別添えしています。
舟”に盛り付けた阿佐ヶ谷練乳餅とつぶあん

■生いちごのソースが合います

 季節限定になりますが、阿佐ヶ谷練乳餅で一番人気の味は、「生いちごの練乳餅」です。その名の通り、生のいちごから作ったソースで食べる練乳餅なのですが、いちごの酸味と阿佐ヶ谷練乳餅のやさしい甘さがぴったりです。考えてみれば、いちごと練乳なので合わないはずがありませんね。

 いちごに限らず、酸味がある果物であれば阿佐ヶ谷練乳餅に合うので、これからも研究していきたいと考えています。「信州あんずたいやき」に使った杏なんかは面白いと思います。

「あまおう」など、いちごの果実を添えた「阿佐ヶ谷練乳餅生いちご味」。酸味と甘みのバランスが最高です。

■手土産にぴったりです

 冷めるとどうしても味が落ちるたいやきとは違い、阿佐ヶ谷練乳餅はお持ち歩きが可能です。食べる時には冷蔵庫で冷やさないと美味しくありませんが、1~2時間程度であれば常温でも持ち歩き可能ですので、客先にお持ちになったり、お家に持ち帰ってから召し上がっていただけます。

 どんな食品でも作ってから時間が経つほどに味は落ちますから、なるべく早く食べていただきたいのですが、それでも冷蔵庫に入れておけば2日程度は大丈夫です。

 ぜひ地元の手土産としてお遣いください。

■阿佐ヶ谷発の菓子にしたいと思っています

 ともえ庵は小さい店ですが、阿佐ヶ谷の地元に根付き、地域のお客さんに利用していただく店になりたいと考えています。ですから、移転してきて最初に作った新しい菓子に阿佐ヶ谷の地名を冠し「阿佐ヶ谷練乳餅」と名付けさせていただきました。

 今後、別の地域で販売する機会があったとしても、やはり「阿佐ヶ谷練乳餅」の名前で売っていくつもりです。

 そのため、手土産用の箱には、阿佐谷パールセンター商店街の入り口を切り絵風にデザインしました。

商店街の入り口をイメージして作った箱の掛け紙。「阿佐ヶ谷」の文字が好きなので、本物の「阿佐谷パールセンター」の看板をあえて「阿佐ヶ谷パールセンター」にしてあります。
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