たいやきならぬ「さんま焼き」

たいやき ともえ庵、久々の新メニューは「さんま焼き」です。
文字通り秋刀魚(さんま)の形のたいやき。鯛ではない形のものを作るのは、ともえ庵でも初めての試みです。
形が違うだけと思われがちですが、食べてみると意外に違いが大きいことがわかります。味についても秋刀魚らしさを意識して少し工夫しています。

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意外なきっかけでできたメニュー

たいやき ともえ庵でメニューを開発する際、常に意識しているのは「他所の店でやっていないこと」です。色々な店のメニューを勉強して参考にしてはいますが、まったく同じものは作らない。発想を参考にしても、そこにひと工夫加えてオリジナリティのあるものにして商品化する、というのが基本的な姿勢です。
でも、さんま焼きは事情が違います。味を仕上げたのはうちの店ですが、基本的な発想は別のところからいただきました。店内発の発想ではない、という意味でもたいやき ともえ庵で初めてのメニューといえます。

二年半くらい前の話です。テレビ局から連絡をいただき、ドラマ撮影のお手伝いをしました。お話をいただいた当初はロケ場所の提供か、ドラマで使うたいやきを提供するような話だと思ったのですが、聞いてみるとドラマの舞台のひとつとなるたいやき店の監修を行うというもの。スタジオに作られたたいやき店のセットや小道具のチェック、役者さんにたいやきの焼き方を指導、さらにドラマで使うたいやきをセット内で焼いて提供するという広範なものだったのです。
ちょうど新型コロナの流行で店の人手に余裕ができたこともあり、当初の打ち合わせから参加、撮影前の役者さんのトレーニング、撮影時の立会いと全面的に協力させていただきました。

そのドラマの中で使われたのがこのさんま焼きです。
舞台となっているたいやき店の新メニューとして出されたという設定です。秋刀魚の形をしたたいやきは、その当時、気仙沼にある店が出されていましたが、一丁焼きで秋刀魚の形というのは初めてのもの。さらに番組の後半には、それにゴルゴンゾーラチーズを入れるという、驚きのメニューも登場し、脚本家さんの発想に驚かされました。
ドラマの小道具として秋刀魚の形をしたハシ(焼き型)を発注して作られ、それをうちの店で預かって焼き方を研究しました。ドラマが終わったあと、ハシ(焼き型)を譲り受けて保管しており、それを使ってお出しするのが今回の新メニューです。

意外に苦戦した焼き方

たいやきの鯛の形を秋刀魚にしただけのさんま焼きですが、預かって焼いてみるとハシの扱いには意外に苦労しました。
まず、形が長いことから、たいやき用の焼き台にまっすぐ置くと頭と尻尾に火が回りません。斜めに置いて火を回しました。また、細長い形なので、つぶあんを盛り付けるのにも苦労し、なんとか焼けるようになりました。

食べるとたいやきと全然違います

このような試行錯誤の結果焼けるようになったさんま焼きですが、食べてみると驚きの発見がありました。たいやきと全然違うのです。
細長さが口のサイズに合うのか、とにかく食べやすい。その食べやすさが食感の違いにつながり、同じつぶあんと皮から焼いたものでも違った味にすら感じられます。今までそんなことを考えたことはなかったのですが、「たいやきって食べるのにけっこうエネルギーがいるんだ」と思うほど食べるのが楽でした。

秋刀魚のワタのほろ苦さをゴルゴンゾーラチーズで表現しました

さんま焼きはワタのほろ苦さを表現するのにゴルゴンゾーラチーズを使っています。
上にも書いたとおり、ゴルゴンゾーラチーズを入れるのは脚本家さんの発想です。これも苦労してつぶあんと混ぜる方法、入れる量などを工夫しました。最初はゴルゴンゾーラをつぶあんに混ぜ込んで焼いていたのですが、それでは味にメリハリがないので直接入れることにしました。ゴルゴンゾーラはかなりクセのあるブルーチーズですが、量を工夫することで、存在感を見せつつ甘味として成り立つバランスをとることができました。
ブルーチーズが本当に苦手な人は無理だと思いますが、ちょっと苦手くらいの人なら美味しく召し上がっていただける味に仕上がっています。

ドラマの中ではゴルゴンゾーラをさんまの胴体全体に入れていましたが、今回のメニュー化では、本物の秋刀魚のワタの部分のほろ苦さを真似て、お腹の部分だけにゴルゴンゾーラを入れ、より秋刀魚を思い出せるものにしています。
ドラマの千秋楽の日に主演の女優さんにご挨拶したとき、「ゴルゴンゾーラのさんま焼きが美味しかったです」と言ってくれました。「いつか発売しますね」とお話ししたのですが、ようやくそれが実現しました。

ワタなしも用意しています

本当に美味しく出来上がったさんま焼きですが、やはりゴルゴンゾーラにはクセがありすぎ、どうしても無理な方もいます。中身がつぶあんだけの「ワタなし」もメニューにすることにしました。食べやすい新たな食感をぜひ体験していただきたいと思います。
その上で勇気を出していつの日にか「ワタ入り」にも挑戦して下さい。

いつもお出しできるとは限りません

さんま焼きは、ご注文を受けてから焼くので少々時間はかかりますが、確実に焼きたてをお渡しすることができますので、お待ちください。
秋刀魚ということで秋の発売に月替りたいやきではなく通年お出しするメニューにする予定です。
ただ、焼く際に焼き台の場所をとりすぎるという弱点があるので、忙しい時期には焼くことができません。さんま焼きを焼くだけで普通のたいやき3匹分くらいのスペースが必要になるからです。 店頭で、さんま焼きをお出しできるか表示しますので、ご確認の上、ご注文下さい。

ご紹介したとおり、初めての店外発想の新メニュー、でもしっかりとともえ庵らしい形に仕上げているつもりです。
ぜひお試し下さい。

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