「たいやきの開き」って何だ!?

 ずっと以前から漠然と温めてきて、半年以上前に試作にとりかかった新メニューが「たいやきの開き」です。

 最終的には日持ちがする菓子を目指しているのでまだ完成ではありませんが、まずはその場で食べていただく形で発売することにしましたので、紹介します。

■本当にたいやきを開いて焼きました

「たいやきの開き」はその名のとおり、一度焼き上げたたいやきを半分に開き、つぶあんの側に皮を敷いてもう一度焼いたものです。

 焼く際に、上下から熱の入った鉄板で挟み、プレスしながら焼き上げるので、せんべいのようにぺったんこになり、まさに開き干しのように仕上がります。

横から見るとかなり薄く仕上っています

■これまでどこにもなかった菓子です

 たいやき ともえ庵は、基本的に「他所のお店の真似をしない」というスタンスでメニューを考えています。流行っているお菓子を真似ることはもちろん、他所のお店が開発されたメニューを真似ることも自ら禁じています。

 ですから、独自に考えて試作し、発売の目途が立った商品でも、インターネットの検索で近い商品が既に他所のお店で売られている場合には、メニュー化を中止したこともあります。

 ただし、他所のお店のものを参考にしてさらにひとひねりし、何か新しい独自の価値が付けられる場合は、うちの独自のメニューとして出すことはあります。食品の世界は広く、誰もが思いつかないまったく新しいメニューを開発することは本当に難しく、既存のものを改良したり、組み合わせることで新メニューにすることが普通だからです。ともえ庵でも、改良や組み合わせの部分に独自性があれば、オリジナルのメニューだと考えて提供してきました。

 しかし、この「たいやきの開き」は、似たものすらない完璧にオリジナルのメニューです。他のともえ庵のメニューと同様に手間がかかって面倒なものなので、他所の店ではやらないだけかもしれませんが、これまでにない新しい菓子ができました。

■“皮好き”の方はハマること請け合いの味です

 ともえ庵のたいやきの特徴は、小豆の風味を生かし甘さを抑えたつぶあんと、薄くパリッとした皮です。以前のブログ記事でも紹介しましたが、皮の薄さはどこにも負けないと自負しています。この皮の美味しさをさらに追及したのが「たいやきの開き」です。

薄くても中にはしっかりとつぶあんが入っています

■構想は7年、半年以上前から試作してきました

 もともと、ともえ庵の開店を計画していた7年以上も昔、一丁焼きでたいやきを焼く練習をしていた際に、パリッとした皮が美味しく、将来は皮の美味しさを前面に出した「ひらめ焼き」を開発したいとぼんやりと考えていたことがありました。

それより少し前の時期から「羽根つきたい焼き」を出す店が増えていたのですが、実際に食べてみると羽根の部分がそれほどパリッとしていなかったことも、「ひらめ焼き」を実現したいと考えていた理由のひとつでした。

ただ、それを実現するには、金型から作る必要がある上、作った金型で必ずしも上手く焼ける保証がないため実行することができないでいたのです。(今回、「たいやきの開き」を開発した際に、当時考えていた「ひらめ焼き」の製法では作ることができないのが分ったので、改めてやらなくて良かったと思っています)

 そこから時間が経ちました。中野で開店したともえ庵は阿佐ヶ谷に移転していました。

 ちょうど今年の初めごろに、店で廃棄するたいやきについて話すことがありました。ともえ庵では美味しいたいやきを提供するため、時間が経ったたいやきを廃棄することを覚悟しているのですが、やはり実際に捨てるのは辛いもの。パン屋さんにおける「ラスク」のように廃棄するたいやきを活用して何か作れないかという話です。

 でも、時間が経ったたいやきは、つぶあんの水分が抜けてしまい、焼きたてのものとは比べ物にならない味になります。店では、ある程度の温度を保つために、焼き台の上に並べているので、余計に水分が抜けているので尚更です。

 実は、この水分が減ったたいやきをどのように美味しく食べるのかというのは、ずっと気にしていた課題で、スチームオーブンや、流行のバルミューダのスチームトースターなども試したことがあるのですが、結局、皮のパリッと感を維持したまま、つぶあんの水分を復活させるのは無理と過去に諦めていました。

 その時に蘇ったのが、「ひらめ焼き」の発想でした。

 水分を戻せないなら、完全に飛ばしてしまえばいい。たいやきをそのまま焼き直しても中途半端になるので、半分に開いて、鉄板で潰しながら焼けば水分は飛ばせるはずです。みずみずしいつぶあんには及びませんが、水分を飛ばして乾いた餡も悪くないのではと考えました。

 それがこの「たいやきの開き」です。

 ただ、焼くための設備を導入したものの、意外に試作に苦労し、ある程度味が安定したきた時には、もう春が過ぎかき氷の季節になっていたため、開発を中断。秋に向けて、再度、取り組んで、今回の発売に至りました。

■作り方をもう少し詳しく紹介します

 上でも紹介したように、焼き上がってある程度時間が経ったたいやきを半分に開き、つぶあんの面に皮を付け直して、上下からプレスして焼きます。この時に、特殊な焼き機でプレスすると同時に上下から熱を入れて焼き上げるのがポイントです。

 また、「開き」を焼く段階で付け直す皮は、たいやきのものよりさらに薄く仕上がるように小麦粉を少なめにしてあります。

 苦労したのは、パリパリに仕上げるタイミングです。薄いものなので、焼き過ぎるとすぐに焦げてしまいますが、焼きが足りないと皮に水分が残ったままになってしまいます。結局、比較的短時間で焼いて、その後じっくりと焼き台の上で乾燥することで水分を飛ばすのが一番良いとわかりました。

 乾燥に時間がかかるので、焼き始めてから仕上がるまで1時間以上かかってしまうことになりますが、その手間をかけた分、美味しいものになったと思います。

 このような製法のため、たいやきと違って、「開き」は焼きたてが美味しい訳ではありません。ですから、持ち帰って食べていただいても湿気らない限りは美味しく召し上がっていただけます。

半分に開いたたいやき
焼くところ、腹開きに並べるのがこだわりです
焼き台の熱でじっくりと水分を飛ばしていきます

■たいやきの品質維持を目指したから、「たいやきの開き」ができました

ともえ庵では、すぐに召し上がるお客さんには、できるだけ焼き上がった直後のたいやきを出し、お持ち帰りに少し時間がかかるお客さんには、焼き上がり直後から数分経って、表面から水分が出にくくなったものを詰めるようにしています。お持ち帰りの方に時間が経ったたいやきを出すのは、焼きたてだと水分(湯気)により紙袋が貼りついてしまうからです。

それでも出すことができなかったたいやきは、20分以上経ったものから順に廃棄してきました。「美味しさを維持するために、たいやきを捨てながら焼く店」には、環境意識が高まった現在は批判もあるかもしれません。それでも、上で紹介したように、痛みを感じつつも廃棄を続けてきたのです。

「たいやきの開き」を作ることで、その痛みから解放されるなら、そのことはともえ庵一同にとっては大きな喜びです。上に紹介しているように、「たいやきの開き」は作るのに手間がかかります。ある程度まとまって売れないと、採算が合わないものになるかもしれません。それでも採算に合うものにして、何とか作り続けたいと本気で考えています。

■意外に合うのが牛乳です

 自信を持って提供する「たいやきの開き」ですが、乾いているものだけに食べる時に口の中の水分をぜんぶ持っていかれるのにはご注意ください。

 熱いお茶と一緒に食べていただくことを想定していますが、意外にコーヒーも合う味になっています。さらに意外なのは、冷たい牛乳がもっと合うことです。もともと、餡と牛乳の相性は良いのですが、乾燥したつぶあんになるとよりマッチするようです。

 まだ、できたばかりなので、色々な食べ方を試していただきたいと思います。

■まだ完成ではありません、お持ち帰りができるようにします

 2017年10月2日にこのブログ記事を書いていますが、「たいやきの開き」はまだ完成ではありません。味についてはある程度仕上がり、製法についても練習しながら、より効率よく作れるように日々工夫しているので、ほぼ完成は見えてきているのです。それでも、未完成なのは、最終的には袋入りにして日持ちがする菓子にするつもりだからです。

 現在、店の事務所にはシール(パック)して密閉し、シリカゲルの小袋を入れた「たいやきの開き」が山のように置かれています。常温で保存し、食味のチェックをするためです。その上で細菌の検査を経て、賞味期限を決めてようやく完成です。

 本当に世の中になかったものだけに、どれくらい日持ちがするのかまったく見えていないので、このチェックは重要です。

 実は、その際のパッケージのサンプルもできているのですが、それは賞味期限の設定ができたタイミングで紹介したいと思います。

 まずは、先行発売するその場で食べるタイプをお召し上がりください。

先行販売するものは紙袋に入っています
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