きざみ生姜と自家製練乳のかき氷

 2017年6月11日(日)から7月9日(日)までのひと月間は、「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」を月替りのかき氷として提供します。

 実はこの品は、ずっと以前、中野時代から提供していたかき氷です。売り出した当初はかなり驚いていただき、病みつきになって何度もご注文下さるお客さんもいました。ただ、味がなかなか想像できないわかり辛いかき氷なので、阿佐ヶ谷に移転後は他のメニューに埋もれてあまりご注文がなくなっていました。

 中野時代は店こそ小さいものの間口が大きく取れたので、かなり大きなポスターを作り、詳細に説明していたのですが、阿佐ヶ谷に来てからは場所がないので、それを怠っていたのが原因かもしれません。

 実は、ホームページにもほぼ同じ説明文を掲載しているのですが、改めてご紹介したいと思います。

たいやき ともえ庵ホームページ「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」

  以下が、当時のポスターの全文です。

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本当に暑い日には食べないでください

~冷たいのに、食後に温かくなるかき氷です~

 真夏にお勧めできない、少し変わったかき氷を作りました。

「きざみ生姜(しょうが)と自家製練乳のかき氷」です。

 発売以来、たくさんの方にご好評いただきました「しょうがのかき氷」。女性に限定すれば、レギュラーメニューの中では一番人気のかき氷です。

 薄くスライスした生姜を砂糖漬けにして数時間。出てくる生姜のエキスいっぱいの水分に少しだけ国産レモンの果汁を加えてシロップにしています。

生姜を煮詰める方法もありますが、それをしないのは、すっきりとした味わいにするためです。甘さの中にしっかりとした生姜の風味とほんの少しの辛みが残る味を、ともえ庵のシロップの味に決めました。

発売当初は驚かれることもありましたが、今では親しまれるメニューのひとつ。自信を持って提供できる“夏の味”です。

 そして今年、「しょうがのかき氷」に新たなバージョンが加わりました。

 砂糖漬けにした生姜そのものを刻んでシロップの中に散らし、さらに練乳を加えた「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」です。

 食べると驚かれることが、3つあります。

 ひとつは、生姜そのものの味です。

長い間、砂糖に漬けこんだ生姜は、ドライフルーツのような口あたりになるのです。

正直に言うと、ともえ庵のスタッフも驚きました。最初は拍子抜けするくらいに生姜の味がなく、噛みしめるうちに、独特の風味と強烈な辛みを感じるのです。

口に入れた瞬間と後味が、まるで違うかき氷を食べているよう。きざみ生姜の存在感、恐るべし・・・、と感じていただけると思います。

 もうひとつは、生姜と練乳の相性の良さです。

 以前に、マカオの名物、「生姜ミルクプリン」を作ろうと試しました。生姜汁に温めて砂糖を溶かした牛乳を注いで固めたデザートです。

牛乳のたんぱく質を生姜の酵素でプリン状に固めるのですが、少しの条件の違いで、固まらないことがよくある、いえ、固まるほうが少ないくらいです。固まらなかったものは、そのままホット生姜ミルクとして飲むしかありません。しかし、飲んでみると意外にいける。生姜と牛乳の相性の良さに気付いた瞬間でした。

あえて生姜の辛みを抑えて作った「しょうがのかき氷」と違い、きざみ生姜を入れたシロップは、食べているうちに強烈な辛みを感じます。最初はとても美味しいのですが、途中からは辛みが強くなって食べづらく感じる方もいらっしゃるかもしれません。

それを包み込んで生姜ミルクの味に変えてくれるのが、店内で牛乳から作っている自家製練乳です。きざみ生姜で感じた刺激がうそのように、優しい味わいに変化します。

両方の味を楽しんでいただいきたいので、「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」では、上半分はきざみ生姜シロップだけ、下半分にきざみ生姜シロップと自家製練乳の両方で味付けしています。ぜひ味の変化をお楽しみください。

なお、最初から生姜ミルクの味が食べたいという方は、スタッフまでお伝えください。上半分も練乳で仕上げさせていただきます。逆に辛みがお好みの方や、牛乳が苦手な方には、練乳なしでの提供も可能です。

 そして最後の驚きは、食後に訪れます。

 食べて5分くらい経つと、体の中心にじんわりとした暖かさを感じられると思います。 そう、きざみ生姜の効果で体が温まっているのです。

 敏感な人だと、体がぽかぽかしてくるかもしれません。そうでない人でも、「かき氷なのに、体が冷えない」と感じられるはずです。

 さきほど、以前からの「しょうがのかき氷」を“夏の味”と紹介しましたが、この「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」は、“真夏にお勧めできない味”になってしまいました。かき氷なのに・・・。

 でも、少し気温が低い日や、かき氷で体が冷えるのが苦手な方には、自信をもって楽しんでいただけるものになりました。

そして何より、気温や季節に関係なく、今までになかった新たな味を提供させていただけることは、ともえ庵スタッフ一同の大きな喜びになっています。

ここにしかない新しい味を、ぜひお試しください。

あまり暑くない日に。

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 ここからは、上の紹介文を少し補足します。

■他にない完全にオリジナルのかき氷です

 この「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」を発売したのは、2014年の夏、まだうちの店が中野で営業していた時代でした。かき氷を初めて2年目のことです。

 ともえ庵では、たいやき、かき氷ともに、オリジナルにこだわっています。基本的に他所のマネはしないという方針です。誰もが知る分りやすい食べ物だけに、たいやきにせよかき氷にせよ、基本的なメニューそのものが他と被らないのは不可能ですが、その中でうちにしか出せない味を作り出すために日々工夫しています。

 かき氷の場合、抹茶に飲用のものを使うことや、かき氷に合う濃さの練乳を自家製で作ることなどです。(参考:食べて気持ちの良いかき氷 ~シロップの話~

とはいえ、メニューの名前だけ見ると他所の店と同じように見えてしまいます。その中で、名前から他所の店では絶対に見ることがないもの、それが「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」でした。

 何せ、きざみ生姜がかき氷になっている訳ですから、他所にはあるはずがありません。当時としては初めての完全にオリジナルのメニューでした。

■もともとは「生姜のかき氷」でした

 当時のポスターの文にもあるように、もともと、かき氷を出すようになった最初の年から「生姜のかき氷」を出しており、ファンになって下さるお客さんも多くいました。また、イベントでの販売では珍しさも手伝って一番人気のメニューになったこともあるくらいです。

 新生姜をスライスして砂糖をまぶして数時間置くと、新生姜からにじみ出た汁が貯まります。この汁に軽く熱を入れ、広島産レモン果汁を加えるとレモンの酸に反応して生姜の汁がきれいなピンク色に変わります。これが、ともえ庵で使っている生姜のシロップです。 甘く、かつ生姜の風味があふれるシロップで、生姜が嫌いな人でなければ、必ず美味しいと思ってもらえる味に仕上がっています。

 なお、この作り方は別に珍しいものではありません。こうして作った生姜汁にスパイスなどを加えて炭酸水で割るとジンジャーエールになります。

シロップを作る前の新生姜、高知県など国産のものを使用しています
薄いピンクの色合いがきれいな「生姜のかき氷」、初年度から変わらず人気の定番メニューです

■生姜たいやきの開発がかき氷にも・・

 かき氷用の生姜のシロップを作ると、大量に出てくる砂糖に漬けた後の新生姜にさらに砂糖を足し、冷蔵庫で1か月以上寝かせてから刻んだものが、うちで使っている「きざみ生姜」です。きざみ生姜というと、お寿司屋さんで出てくるガリのようなイメージを持たれることが多いのですが、1か月経つとシャキシャキした食感がなくなり、くにくにとした不思議な感覚、洋菓子で使うオレンジピールのような歯応えになります。

 もともとは、この生姜を乾燥させて食べてみようと試していたのですが、長く砂糖漬けした生姜を食べてみて、これは他のものに合わせて食べたほうが美味しいと思いました。

餡に混ぜてたいやきに入れて焼いてみると、今までになかった味で本当に美味しい、「きざみ生姜たいやき」になりました。ただし、試作した時期が初夏だったので、ただでさえ暑い時期に体が温まるたいやきはないだろうと、メニュー化は延期することにしました。

 次に試したのが、きざみ生姜を混ぜた生姜のかき氷のシロップです。砂糖漬けしたきざみ生姜は口に入れた瞬間はほとんど味を感じないのですが、しっかり噛むと生姜の辛味が感じられ、甘いシロップとは対極の味になります。とはいえ、もともとはどちらも生姜ですから、味にはまとまりがあり、不思議な美味しさになります。

1か月以上砂糖漬けにした新生姜を刻んだものです

 最初はこの味を楽しんでいたのですが、次第に辛さが口の中に残り、食べ続けるのが辛くなってきます。そこで登場するのが自家製練乳です。

■実は生姜と練乳は最高の相性です

 ホームページにも掲載していますが、以前に、マカオの名物「生姜ミルクプリン」を作ろう挑戦した結果、ホット生姜ミルクを何杯も飲むはめになったのですが、これが美味く、生姜と牛乳は相性が良いということを知りました。

 なので、きざみ生姜シロップには練乳が合うだろうと思っていたのですが、実際に合わせてみると予想以上、辛さがすべてやさしい練乳の味に包み込まれ、食べやすくほっとする味に仕上がりました。

 大袈裟ですが、きざみ生姜シロップのかき氷を食べ続けた後に自家製練乳を合わせると、口の中が天国になったように感じます。

 ややネタバレになるのですが、この辛味とやさしい甘さの落差を味わっていただきたいので、きざみ生姜と自家製練乳のかき氷では、上段はきざみ生姜シロップ、下段はきざみ生姜シロップと自家製練乳を合わせたもの、という二段構成で盛り付けています。

盛り付けのイメージです

■食べると本当に体が温まります

 生姜に発汗効果があるのは知られていますが、きざみ生姜と自家製練乳のかき氷は、食べると少し体温が上昇して体が温まる感じがします。体温上昇まで感じられなくても、かき氷を食べたのに体があまり冷えないという感じは味わっていただけると思います。普通の「生姜のかき氷」では感じないので、おそらくきざみ生姜の効果だと思われます。

 なので、上の紹介文にもあるようにこのかき氷は真夏にはあまりお勧めできません。本格的な暑さに突入する前、ちょうど梅雨時のこの時期にこそ楽しんでいただけるかき氷です。

■いくつかのサイトでご紹介いただいています

 発売当時は珍しかったこともあり、いくつかのサイトでご紹介をいただきました。すべて中野店時代の記事です。

・Gigazine「かき氷なのに体が暖まる「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」をともえ庵で食べてきた

・B級グルメ応援サイト ばくてつウェブ「食べると暑くなるかき氷?!–たいやき屋のかき氷–

・ひとりでもまめにがんばるブログ「暑い日に食べてはいけない?かき氷 ともえ庵

 ご紹介いただいたサイトの皆さん、有難うございました。

■氷の質は中野時代を上回ります

 最後に付け加えたいのは、氷の質は確実に中野時代を上回っていることです。経験を積み、かき氷機を変え、氷と機械の扱い方を工夫した結果です。(参考:食べて気持ちの良いかき氷 ~氷について~

 ですので、「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」を発売当時以上に楽しんでいただけるのではないかと期待しています。

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