毎月10日はともえ庵の日

 この文章を書いているのは2017年6月10日(土)、毎月10日の「ともえ庵の日」です。

「ともえ庵の日」は、うちの店が阿佐ヶ谷に移転して以来、ずっと続けているイベントで、通常150円(2018年2月より180円)のたいやきを100円で提供させていただいています。

 今日は、梅雨入り後ながら夏日ということで気温32度が予報されているのですが、それでも開店前から途切れなく行列していただき、たいやきと、やはり特価で提供させていただいている阿佐ヶ谷練乳餅をたくさんお買い求めいただいています。

去年の夏の時期の「ともえ庵の日」の写真です。

■真夏でも「たいやき100円」

 最初の年は、さすがに暑い時期にはたいやきを安くしても喜んでいただけないのではないかと思い、夏場はかき氷や飲料を少しお安く提供させていただいていました。ところが、うちの店が思っている以上に、「10日はたいやき100円」が浸透していたようで、それを目当てのお客さんが相次いだので、今では通年で「10日はたいやき100円」とさせていただき、時期に合わせてそれ以外のメニューも少し割引して提供させていただいています。

 ただし、8月10日だけは、店がある阿佐ヶ谷パールセンター商店街の「七夕まつり」直後なので、店自体を休業しており、「ともえ庵の日」もお休みをいただいていま。

■どうして10日なのか?

 もともと、店が中野にあった時代には、一周年、二周年、三周年と年に一度だけ、たいやきを割引して提供していました。当時の店は路地裏の目立たないところにあったのですが、年に一度ということもあり、本当にたくさんのお客さんに来ていただいていました。その経験から、イベント的にお客さんに楽しんでいただけることをもっと頻繁にできればと考えてできたのが「ともえ庵の日」でした。

正直に言うと、経営的にはどうしても週末に比べてお客さんが減る平日を盛り上げたいという思いもあり、「毎月第三○曜日」というのも考えたのですが、それでは覚えにくい。考えてみれば、平日と週末でお客さんの層が違うなら、週末のお客さんにも還元できたほうがいい、ということで日を固定して行うことにしました。

中野店の1周年。雨にもかかわらず、多くのお客さんにお越しいただきました。

 10日にしたのは、単に語呂が良いからです。「とおか」の“と”と「ともえ庵」の“と”、一文字し掛かっていないのですが、言葉にするとなぜかしっくりくるので、覚えやすいように「毎月10日はともえ庵の日」とさせていただきました。

 

■ともえ庵を知っていただき、たいやきを食べていただくきっかけ作り

 上書いたように、お客さんへの還元を目的に始めた「ともえ庵の日」ですが、店にもメリットがあります。

 ひとつは店を知っていただけることです。この日に行列ができることで、「なんだろう」と店を意識して見てもらえます。また、店があることを知っていても、強く意識することがなかったお客さんが、この日の行列を見て改めてうちの店があることを意識して下さることにもつながっています。

 そして、少しお安く提供させていただいているので、これをきっかけにたいやきを食べていただけます。うちのたいやきはどこよりも美味しい、少なくとも店の人間は全員が本気でそう考えていますから、ひとりでも多くのお客さんに食べていただける「ともえ庵の日」は貴重な機会です。

 面白いのですが、お客さんは必ずしも安くなっているからうちのたいやきを食べて下さる訳ではありません。「行列を見たので、空いている日に来ようと思って」と、ともえ庵の日を見て意識して、後日来て下さるお客さんもたくさんいます。

 阿佐ヶ谷の中では、店があるパールセンター商店街は一番の繁華街ですが、観光地やビジネス立地ではないため、通りを歩く人のほとんどは地元の人です。地元の人にとっては、常にある店はあって当たり前。何か理由がないと立ち寄ろうとは思いません。なので、ともえ庵の日に「そういえば、ここにたいやき屋があった」と改めて意識してもらうことは重要なのです。

 意識していただいた上で、食べていただけるかどうかは売っているものの味しだい、そこは自信を持って勝負したいと思っています。

冬場のともえ庵の日。行列が中杉通りまで伸びることもあります。
雨の日には、アーケード内にある店頭の通路に折り返して並んでいただきます。

■職人の腕が上がる「ともえ庵の日」

 もうひとつ、ともえ庵の日を続けている理由があります。ひょっとしたら、こちらの方が真の理由かもしれないくらい重要な理由です。それは、ともえ庵の日が職人の腕を上げることにつながるからです。

 ともえ庵の日には、多くのお客さんに来ていただけるので、どれだけたいやきを焼いても余ることを心配する必要がありません。逆に言えば、焼いただけ買っていただけるので、焼き手は全力でたいやきを焼き、スピードを上げることにチャレンジすることができるのです。

 一丁焼きのたいやきは、通常のたいやきと違い一気にたくさん焼くことができません。また、これはどのたいやきでも同じだと思いますが、焼き過ぎて置いておいてもダメになり、廃棄せざるを得なくなります。(うちの場合、20分を基準に廃棄しています)その中で、お客さんをお待たせせず、たくさんのたいやきを出すためには、スピードを上げて焼く技術がもっとも大切になります。お客さんが少ない時にはゆっくりと焼いていても、たくさんのお客さんにお越しいただいた瞬間に最高のスピードで焼ける、そんな技術が必要となるのです。

 ただし、練習だから手を抜くつもりは毛頭ありません。ともえ庵の日に焼き場を任せることができるのは、最高速度に挑戦することができるだけの技量を持つとみなした焼き手だけです。経験が浅く、ゆっくりなら焼くことができる程度の焼き手は、ともえ庵の日は販売要員にまわってもらっています。

 そのため、焼き手にとってはともえ庵の日を任されることは信頼されているということの証である反面、プレッシャーを感じることでもあるのです。

 実はこれは、中華料理店の「餃子の王将」さんのニュースを見て発想しました。王将さんは、炒飯や唐揚げなど定番のメニューを時々値下げし、圧倒的な注文の量に対応することで料理人の腕を上げる機会を作っているそうです。この発想をお借りして、ともえ庵の日で職人として成長することを目指しています。

 おかげで、ともえ庵の日を経ることで目に見えて焼き手が成長しています。

ともえ庵の日に使用している創業期以来のたいやき袋。

 お客さんは楽しく、店内は熱く燃えている「ともえ庵の日」、機会があれば覗いてみていただければ幸いです。

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