夏みかんのかき氷

そろそろかき氷の季節。

当店でも、昨日の営業終了後に看板を夏看板に換えました。

秋から冬にかけて毎月提供してきた「月替りたいやき」に代えて、これからしばらくは「月替りかき氷」を出すつもりです。

2017年5月11日(木)から6月9日(金)の1ヶ月間は、「夏みかんのかき氷」を用意しました。

●「甘夏」とは違うもの。原種が「夏みかん」です

この「夏みかん」、実は意外なほど知られていません。

周りの人に聞いてみて気づいたのですが、ほとんどの人が「夏みかん」だと思って「甘夏」を食べています。

ちょっと整理すると、「夏みかん」は山口県原産で、今でも山口県では栽培されていますが、それ以外の地域では商業的な栽培はされていません。ただ、個人の家の庭などに生えているのは時々見かけるので、必ずしも山口県だけの果物ではありません。

山口県では菓子の材料などに使用されており、地元でも果物としてそのまま食べられることはあまり多くないようです。

それに対して「甘夏」は大分県原産の品種、正式名は「川野夏橙(かわのなつだいだい)」です。夏みかんが変異した品種で、より糖度が高いのが特徴です。

現在は熊本県が最大の産地ですが、栽培されている地域も多く全国的に流通していいます。夏みかんの一種ではあるので、「甘夏みかん」などと表記され夏みかんと混同されることも多いようですが、果物屋さんや八百屋さんの店頭に並んでいるのは、ほぼこの「甘夏」です。

左が「夏みかん」(山口産)、右が「甘夏」(熊本産)

●そのまま食べるには適さない強烈な酸味が、最高のかき氷になります

夏みかんが甘夏に負けたのは、食べやすさの違いが原因だと思われます。皮がごつくて剥き難く、その上、尋常じゃなく酸っぱい。本当に野生を感じる酸っぱさです。

ところが、この酸味がかき氷のシロップを作る時には最大の武器になります。一般的に果物は甘いものが好まれがちですが、かき氷に限らず菓子として加工する場合には甘みはそれほど重視されません。甘みについては砂糖を加えて調節することができるからです。

かき氷の場合も、たくさんの氷、つまり固体水にシロップをかけて食べるのでどれほど甘みのある果物でも果汁をそのまま絞っただけでは味が薄まって美味しくなくなります。そこで、砂糖のシロップで甘みを調整し、食べて美味しく感じるようにしているのです。

そうなると、シロップの素材として求められるのは、甘みとは違う方向の個性です。酸味や苦味、場合によっては辛味、香り、食感などがそれに当たります。

逆に言えば、それ自体は美味しくても、甘みの要素が強い果物はシロップには向きません。例えば、白桃は美味しい果物ですし、かき氷にした場合に人目は惹きますが、甘み以外の個性が乏しいことから美味しいかき氷にはならないので、商品化を断念しています。

そして「夏みかん」。

砂糖シロップを加えても食べやすくなりこそすれ、酸味はまったく損なわれません。独特のさわやかな風味の初夏にぴったりの味わいになっています。

さらに、果肉の粒がしっかりとしているのも「夏みかん」の特徴です。この粒の美味しさもぜひ味わって欲しいので、甘みを調整した果汁のシロップとは別に、果肉をこそげ取り、バラバラに散らしてシロップに合わせています。

口の中で粒から飛び出るより強い酸味の果汁が気持ちの良いアクセントになります。

小サイズ700円、大サイズ900円。

これから1ヶ月、ぜひお楽しみください。

山口県から取り寄せた1ヶ月分の「夏みかん」が厨房の冷蔵庫に収まりきらず、事務所の冷蔵庫を占拠しているところです(苦笑)
夏みかんの果汁はスロージューサーで絞っています。
以前は、スクイーザーに押し付けて手で絞っていたので、もっとスローでしたが(笑
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