月替りたいやきとして、3月11日~4月9日まで提供する「広島レモンたいやき」は、広島産のレモンの果肉とピール(皮)をたっぷりとつぶあんに合わせて作ります。ともえ庵のやさしい甘さのつぶあんの中にレモンの酸味とレモンピールのほろ苦さがしっかりと存在感を見せるどこにもない味に仕上がっています。
■ともえ庵得意の広島産レモン
以前にかき氷について紹介した記事「広島大長レモン」でも紹介した通り、ともえ庵には広島産のレモンを使ったメニューがたくさんあります。以前からのご縁で貴重な広島産のレモンや果汁が入手できるからです。
とはいえ、その前提はやはり味、美味しさです。隣接する他の瀬戸内地域のレモンに比べて広島県産だけが突出している訳ではありませんが、輸入されているレモンとはまったく違うコクのある美味しさは間違いありません。
記事で紹介したように、かき氷には産地で旬の時期に搾ったレモン果汁を使っています。レモンの旬は冬から早春なのでかき氷の時期には合わないからです。しかし、より美味しいもの、つまり旬の時期の果実そのものを使いたいという想いから、昨年(2017年)に作ったのが「広島レモンたいやき」です。
広島レモンの特徴や輸入品との違いや、ともえ庵が貴重な広島産のレモンを仕入れることができる理由については、かき氷の記事に書いたとおりです。ただ、今年(2018年)については、これまで仕入れてきた広島県の大長地域が台風の直撃により不作となったことから、やはり広島県の蒲刈産のレモンを仕入れて使っています。
■果肉とピール(皮)、レモンを丸ごと使っています
以前から何度も書いているのですが、ともえ庵ではたいやきでもかき氷でも、甘さ以外の個性のある味の素材に使います。たいやきの場合、つぶあんの甘さがちょうどよいと考えているので、それに合わせて個性を発揮できる甘さとは違った方向の味を求めているのです。
レモンの場合には言うまでもなく酸っぱさが個性ですが、爽やかな風味も魅力です。でも、「広島レモンたいやき」はそれだけに止まらず、ほろ苦さと独特の食感が楽しめるレモンの皮もつぶあんに合わせています。
レモンの果肉はそのまま、レモンの皮は刻んでから何度も茹でこぼしをして食べやすい固さと苦みに調整してつぶあんに混ぜ込みます。
糖度を抑えたやさしい甘さのともえ庵のつぶあんに合わせると、最初に爽やかな風味と酸味が感じられ、その後にレモンピールの食感とほろ苦さが感じられる、どこにもない餡に仕上がっています。
レモンの果肉が入っている袋状の部分を瓤嚢(じょうのう)と言いますが、それ以外の部分をほぼ丸ごと使っているからこその味わいです。
■最初のひと口からレモン、それだけではありません
「広島レモンたいやき」を食べていただけると、最初のひと口から「あっ、レモンだ」と感じていただけると思います。
そしてもうひとつの魅力は、つぶあんがより美味しくなっていることです。白玉たいやきの記事でも書きましたが、たいやきにとってつぶあんの水分は重要、でもあまり水分が多すぎると薄い皮には納まらないので焼くことが難しくなります。白玉たいやきの場合には白玉に含まれる水分が焼いている時につぶあんに移り、炊き立てのつぶあんのようにみずみずしくなるのですが、実はこの「広島レモンたいやき」でも同じようにレモンの水分がつぶあんに移り、みずみずしい仕上がりになるのです。
色が薄いみずみずしいつぶあん、そしてレモンの酸味とほろ苦さ、この記事を書いているだけですぐに食べたくなるほどです。
■昨年は大人気メニューになりました
2017年に「広島レモンたいやき」を作った際に、正直なところ売れるのかどうか疑問でした。確かに広島レモンは知名度があり人気でしたし、味には自信がありましたが、つぶあんと合わせた味にどれくらい興味をもってもらえるかがわからなかったからです。
例えば、12月に出している「紅玉りんごたいやき」は、和風のアップルパイのような味わい、という表現で多くの人に興味をもっていただき、クリスマスの時期に目立つ赤色のりんごのビジュアルもあって大人気メニューになりましたが、「広島レモンたいやき」はそこまでのわかりやすさがないことが不安材料でした。
ところが、実際に販売を始めると、売上は尻上がりに伸び、「紅玉りんごたいやき」に並ぶくらいになるヒットメニューになりました。(その後、「よもぎ白玉たいやき」がそれを抜き去って大ヒットとなるのですが、それは別のお話です)
もうひとつ面白いことがありました。知人がイベントで自分で挟むタイプのモナカを出したいということで、モナカの皮と広島レモンたいやきに使っているものと同じレモンを合わせたつぶあんを提供した際のことです。
数日間のイベントの分を提供したのですが、初日に連絡があり、モナカの皮は十分に余っているのにレモンのつぶあんだけが足りなくなったとのこと。レモンのつぶあんを気に入ったお客さんがモナカの皮に挟まず、皮の片方にレモンのつぶあんを山盛りに盛り付け、カナッペのようにして食べ始めると、まわりのお客さんも全員がそれにならい、あっという間にレモンのつぶあんだけがなくなってしまったという話でした。
レモンのつぶあん恐るべし・・・でも、喜んでいただけて嬉しく思いました。
■ご注文いただく際の注意
他の月替りたいやきと同様に「広島レモンたいやき」もご注文をいただいてから焼き、焼きたてを出すようにしています。ですから、ご注文後に5~10分程度お待たせしますので、余裕をもってご注文ください。
【追記】時間が経っても楽しめるたいやきです
少しだけ追記です。「広島レモンたいやき」の特徴をあとふたつ書き忘れていました。
ともえ庵のたいやきは焼きたてが一番です。時間が経つごとに味が落ちていくので、できるだけ焼きたてを出せるようにしています。(参考記事:「やっぱりたいやきは“焼きたて”にこだわりたい」)
ところが、この「広島レモンたいやき」は、ともえ庵で出してきたたいやきの中で唯一、時間が経つことを楽しむことができるたいやきなのです。(2018年3月現在)
もちろん、焼きたての「広島レモンたいやき」は本当に美味しい。レモンの風味、酸味、苦みがつぶあんに合うだけでなく、つぶあんがみずみずしいという特徴は上で紹介した通りです。
一方、時間が経って冷めてしまった「広島レモンたいやき」は違った美味しさを味わうことができます。少し時間が経つことでつぶあんとレモンが混じり合って一体化したようなしっとりとした美味しさが生まれるのです。こちらの方が美味しいという人もいるくらいです。
さらにもうひとつ、写真を見ていただけるとわかるかと思いますが、少し時間が経った「広島レモンたいやき」は、つぶあんが本当にきれいな淡い色になります。つぶあんは糖度が低いほど淡い色に仕上がるのですが、これはそんなレベルの色ではありません。もっと淡く、きれいな色です。
おそらく、小豆のポリフェノールとレモンの酸が反応して変色しているのではないかと思います。時間を置いて「広島レモンたいやき」を食べる時には、つぶあんの色も楽しんでいただければと思います。
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