2017年11月11日から「月替りたいやき」として、旬のりんごを使った「紅玉りんごたいやき」を提供させていただきます。酸味のある紅玉りんごは、やさしい甘さのともえ庵のつぶあんとマッチし、言わば“和風アップルパイ”のように仕上がっています。
■月替りたいやきとは?
ともえ庵では、秋から春にかけてのたいやきが美味しい時期に、「月替りたいやき」を行っています。
毎月10日を「ともえ庵の日」にしているので、その翌日の11日から次「ともえ庵の日」の前日、翌月の9日までを目途に、毎月違うたいやきを出しているのです。
「月替りたいやき」として作るたいやきは、他の店では味わうことができない独自のもの、どれもともえ庵のオリジナルメニューです。
和の菓子であるたいやきの美味しさを損ねることなく、新たな美味しさを付け加えることをテーマにした「月替りたいやき」は、つぶあんに合う美味しさの素材を組み合わせて新しいたいやきを作っています。
2017年度の「月替りたいやき」の最初は10月11日から11月9日までの「白玉たいやき」のお試し価格でした。
ご存知戴いているように、「白玉たいやき」は年間を通して提供しており、何度もお買い上げいただく方も多い、ともえ庵の不動の定番メニューです。とはいえ、まだご存知ない方や、気になっているけど食べたことがないというお客さんも多いので、たいやきの季節の入り口となる10月に少しだけお買い得となる「お試し価格」で出させていただきました。
そして、二つめではありますが、その月にしかないメニューという意味では第一弾となるのがこの「紅玉りんごたいやき」です。
昨年度は12月~1月の1か月間だったのですが、とにかく人気で延長を望む声も多数いただいたので、今回は紅玉りんごの旬である11月から2か月間提供させていただきます。
■リンゴについての基礎知識
リンゴはヨーロッパ原産で、日本では江戸時代から栽培されていたそうです。なお、現在、我々が食べているリンゴは正確にはセイヨウリンゴ(西洋リンゴ)です。それ以前から中国が原産のワリンゴ(和リンゴ)が日本に入っていたそうですが、実が小さいことから観賞用や仏事用などに使われ、食用として普及することはなかったそうです。
日本におけるリンゴの生産地としては、青森県が圧倒的にトップ60%近くを占めています。次に長野県が20%を占めているので、この両県だけで80%近くを生産していることになります。
世界中では数千から一万以上のリンゴの品種があると推察されており、日本でも85品種が品種登録されていますが、この品種登録は絶対に必要ではないので、有名な品種でも登録されていない場合もあるそうです。
日本でもっとも人気がある品種は「ふじ」で、全体の約半分を占めています。次いで、「つがる」、「王林」、「ジョナゴールド」が多くなっています。
■かつては人気品種、今では製菓用に欠かせないリンゴ、「紅玉」
たいやきに使っている「紅玉」はアメリカが原産で、明治初期に北海道開拓使によって導入されました。「紅玉」という漢字の名前ですが、もともとアメリカでは「ジョナサン」と呼ばれている品種です。
日本での名前のとおり皮が真っ赤で、香りが良く酸味が強いのが特徴です。日本では、昔は代表的なリンゴのひとつとして人気があり、広範囲で栽培されていましたが、酸味より甘さが好まれるようになったことから、次の世代の品種に人気が移り、生産量は激減しています。
なお、現在、「ふじ」に次いで人気が高い「つがる」と「ジョナゴールド」は、どちらもこの「紅玉」と「ゴールデンデリシャス」の交配種です。日本で開発され品種登録されたのが「つがる」で、アメリカで開発されて登録されたのが「ジョナゴールド」だそうです。
このように自身の血統を含めた次世代のリンゴに主役を譲っている紅玉ですが、今でもアップルパイに代表される製菓用のリンゴとしてもっとも人気があります。
以前のブログ記事「夏みかんのかき氷」http://www.tomoean.net/2017/05/11/70868969/ でも書いたことがありますが、菓子やかき氷のシロップを作る際、果物に求める条件は「甘さ以外の個性」になります。砂糖を使った場合に甘さは消えてしまう、極端に言えば甘さは砂糖で十分に表現できるので、それ以外の酸味や苦み、香り、歯ごたえなどの個性が強い素材が必要になるからです。
その点では、酸味が際立つ「紅玉」に匹敵するリンゴは他にありません。
厳密に言えば、イギリス原産で長野県の小布施等で栽培されている調理用リンゴ「ブラムリー」や、以前に展示会で試食させてもらった紅玉の系統の“実まで赤いリンゴ”「紅の夢」などは強い酸味があるので菓子に向いていると思いますが、まだ価格がこなれていないので、現時点では“紅玉しかない”という状況です。
実際に他の品種のリンゴでも試作したことがあるのですが、やはり「紅玉」のほうが酸味が際立ち、果肉が崩れないので目に見えて美味しく仕上がりました。
■紅玉りんごたいやきの作り方
たいやきにする紅玉りんごは、ザク切りにして軽く熱を入れ、レモン果汁とニッキで風味づけをします。
最初の試作では皮をむいた紅玉りんごを使っていたのですが、皮ごと熱を入れた方が美味しく仕上がったので、最終的には皮つきのまま使っています。「リンゴの皮にはつやを出すためにワックスが使われている」という説を信じている方もまだ少なくないと聞きますが、リンゴの表面がつやつやしているのは、水分の放出を防ぐためにリンゴが自らワックスに似た成分を分泌しているだけで、決して人工的コーティングされている訳ではありませんので、念のため書き添えておきます。
風味づけに使うレモン果汁はわずかの量ですが、広島産のものを使っています。広島産のレモン果汁を使う理由については、以前のブログ記事「広島大長レモン」http://www.tomoean.net/2017/07/15/71785729/ に書かせていただいたように、ともえ庵がご縁により広島の産地からレモン果汁を仕入れることができるからです。
もうひとつ風味づけに使うニッキは、あまりなじみがない人もいらっしゃるかもしれませんが、「シナモン」の別名と言えば解るでしょう。京都名物の八つ橋のように和菓子に用いる場合には古くからの呼び名であるニッキが使われています。
ここまでの仕込み、料理が好きな方は気づかれていると思いますが、アップルパイの仕込みとほぼ同じです。
違うのはここから、熱を入れた紅玉をつぶあんに合わせることです。ざく切りの紅玉りんごがごろごろと入っている感覚で惜しまずに混ぜ合わせています。
あとは、普通のたいやきと同じように焼き上げるのですが、表面にほんの少しだけゴマを散らせて仕上げます。「白玉たいやき」にも使っているこのゴマ、風味が良くて美味しいのですが、実はゴマを散らせる位置を変えて、たいやきの中身を見分ける目印にしているのです。
■「ひと口ごとに味が変わる」これまで誰も味わったことがない仕上がりです
このようにして焼き上がった「紅玉りんごたいやき」は、本当に誰も味わったことがないものになっています。甘さを抑えたつぶあんは、紅玉りんごから出た水分が加わってみずみずしく、熱々の紅玉りんごの酸味はつぶあんのやさしい甘さにくるまれつつも際立っています。
昨年のシーズンに食べていただいたお客さんからは、「ひと口ごとに味が変わるので、食べるのが楽しくなる」という感想をいただきました。紅玉りんごを散りばめたことで、りんごが口に入るときと入らない時で、ひと口ごとに味が違ったものになるからです。
ともえ庵の「月替りたいやき」は、「きざみ生姜たいやき」や「酒粕たいやき」、そして“ほぼ草”とまで言われるほど濃い「よもぎ白玉たいやき」など、好き嫌いが分かれるものが多いのですが、この「紅玉りんごたいやき」は食べたほぼ全員が美味しいと言って下さるたいやきです。
ぜひ期間中にお試しください。
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