世界一小さいたいやきを焼いてみた!

 普段はかなりマジメにたいやきに取り組んでいるたいやき ともえ庵ですが、楽しい食べ物であるたいやきには遊び心も必要、ということで世界一小さいたいやきを焼くことに挑戦してみました。

 結果は写真のとおり、体調1.3cmのたいやきを焼くことができました。

 せっかくなので動画も作ってみました。まずはご覧ください。

■世界一大きなたい焼き、分厚いたい焼き、薄いたい焼き

 余談ですが、世界一大きなたい焼きは静岡市の「丸子峠鯛焼き屋」さんです。時々テレビでも紹介されていますが、体長60cmという巨大サイズです。特注の型を使って時間をかけて焼くため予約販売だそうです。

 さらに余談ですが、日本一厚いたい焼きとされているのは、「銀座たい焼き櫻家」さんのたい焼きです。逆に薄いたい焼きとして、当店の「たいやきの開き」をご紹介いただくことが多くあります。以前に『ロケットニュース21』さんがそのように掲載して下さったからなのですが、店としては「「たいやきの開き」は「たいやき」を加工した別物の菓子と考えているので、話題にしていただけるのは有難いのですが、日本一薄い訳ではありません。

 なお、当店が“薄さ”に自信を持っているのは、たいやきの皮です。他にはない製法でギリギリまでつぶあんを詰めることで実現した皮の薄さは日本一だと自負しています。

 参考:ブログ記事「本気で薄い皮 ~日本一薄い皮のたいやき~」 

■ガチャガチャの玩具が発端です

さて、世界一小さいたいやきの話に戻ります。

これは、ある玩具メーカーが発売したガチャガチャに端を発します。たいやきを焼く道具のミニチュアをガチャガチャの玩具にしたのです。なかなかマニアックです。

※ここに写っているたいやきはフィギアです

しかし、もっとマニアックなのは焼く道具である金型が二種類あったことです。ひとつは通常の量産タイプの平型の金型です。本物は5~6匹を一度に焼くのですが、これはミニチュアなので2匹ずつ焼くものになっていました。そして、もうひとつは“天然もの”と呼ばれる一丁焼きの金型だったのです。

※天然もののたいやきについては、過去のブログ記事「たい焼きの天然ものと養殖もの」で詳しく書いていますので、ご覧になって下さい。

 もちろん、本物のたいやきを焼く金型は金属(鋳物)でできていますが、このガチャガチャの金型、ミニチュアのくせに金属製でした。

 金属製のハシ(たいやき店では一丁焼きの金型のことをハシと呼びます)なら、本物のたいやきを焼くこともできるのではないかと考え、既に売り切れていたのですがネット通販でやや割高に購入してみました。材質は亜鉛ダイキャストにニッケルメッキ、食品機器にも使われている材料なので使えそうです。

そうなるとプロの職人魂に火が着きます。ともえ庵の店長は、老舗たいやき店で修業した後に、老舗とは違った美味しさを求めて当店に転職した筋金入りの“the・たいやき職人”、一丁焼きの金型を前に退くことはありません。“世界一小さいたいやき”への挑戦を決意しました。

■道具

 メインとなる道具はガチャガチャの玩具のハシ(一丁焼きの金型)ですが、たいやきはそれだけでは焼くことができません。ひとつひとつ紹介します。

・ハシ

 ガチャガチャの玩具のハシは良くできているのですが、実際に焼くとなるといくつか難点がありました。ひとつは、開き方が十分でないので、コナや餡が詰めにくいこと。もうひとつは、ミニチュアサイズなので仕方ないのですが、持ち手が短いので熱くなってしまうことでした。

 開き方については、いったん二つのパーツをばらし、材料を詰めた後にもう一度組み合わせて焼くことにしました。

 ハンドルの短さは細いアルミパイプで継ぎ足して補ったのですが、試行錯誤の結果、軍手をして焼けばよいことがわかり、途中からはアルミパイプの継手は使わなくなりました。

・レードル(お玉じゃくし)

 普通に一丁焼きのたいやきを焼く場合には、長めの柄がついた浅いレードル(お玉じゃくし)を使います。これは、一般に売られているレードルのお玉の部分に長い柄をとりつけて店で自作しているものです。

 今回のガチャガチャたいやきを焼く際には、このレードルをどうするかかなり迷い、ネットでドールハウスに使うお玉じゃくしを見つけて購入、細いアルミパイプで柄を継ぎ足したものを作りました。

 ただ、これも試行錯誤の中で、下記のあんべらとして使う楊枝を平たく削ったものの方が使いやすいことがわかり、途中からは変更しました。通販で買ったミニチュアのレードルの出費が無駄になったのが残念です。

・あんべら・油敷

 つぶあんを掬って型に乗せる道具をあんべら(餡ベラ)と言います。これは、市販されている楊枝の先を平たく削って作りました。

 また、油を敷くのにも同じ楊枝を使いました。

■材料

 材料は基本的に本物のたいやきと同じものを使います。そうでないとたいやきになりません。

ただ、つぶあんについては少し違った準備をしました。というのは、焼こうとするたいやきが小さすぎて小豆の粒が収まりきらないからです。漉し餡を使うという方法も考えましたが、できるだけ普段のたいやきに近いものを焼くため、つぶあんを細かく砕いて使うことにしました。

ブレンダ―やミルサーという道具を使おうと考えていたのですが、小さなたいやきに使うつぶあんの量はあまりに少ないので、包丁でつぶあんのつぶを刻んで用意しました。

■焼いてみました

 さて、いよいよ焼きの工程です。

詳しくは動画を見ていただきたいのですが、いや細かい細かい。最初はコツがつかめず何度も失敗し、ようやく何匹か焼くことができました。

 上にも書きましたが、意外にハシのパーツが外れやすく、最初のハシはそのままもう一度組み立てることができなくなってしまいました。

 この挑戦は2日にわたって行ったのですが、2日目は少し要領を掴んだので、初日に比べて失敗も減り、何匹か焼き上げることができました。

 少し残念だったのは、せっかく用意したアルミパイプやミニチュアのレードルを結果的に使わなかったことです。パーツが外れやすいため、絵を長くすると扱いにくくなり、結局は素手と軍手で熱さに耐えて焼くことで焼き上げました。

■できあがり

・姿

 写真のとおり、全長1.3cmのたいやきを焼くことができました。本物のたいやきと比較してもらえると、その小ささがわかると思います。

普通のたいやきとの比較です。

半分に割った写真でわかるとおり、中にはしっかりと餡が入っています。

さらに皮を取り外すと、このサイズながらともえ庵らしい薄皮に仕上がっているのがわかります。

・試食してみました

 食べてみると、皮はサクッとして美味しく、その中にほのかな餡の甘みを感じました。十分、たいやきの味になっていました。

 ただ、「小さすぎてまったく食べ応えはなかった」というのも本音です。食べて楽しむものではないのでしょうね。

・ちょっとだけ反省

 この玩具自体はよくできており、型の内側のたいやきの姿も念入りに作れているのですが、やはり小麦粉を入れて焼くとやや膨らんでしまい、きれいな姿で焼き上げることはできませんでした。

 もうひとつ、さすがに小さすぎで中の餡の水分がすぐに飛んでしまいました。上記のように、それなりに美味しかったのですが、たいやきの本当の美味しさには一歩劣るものでした。

 あと、これはたいやきを焼くことには関係ありませんが、接写で写真を撮る技術を磨かないと、この成果が伝えられないと、腕の不足を痛感しました。

■本気の注意事項

 今回の挑戦は、たいやき ともえ庵が勝手に行ったものです。

使用したハシの玩具の製造元(メーカー)では、まさか本当にたいやきを焼くとは考えておらず、ハシを焼くさいの安全性や、温度が上がった場合に有害成分が出てこないかなどについては検証していないとのことです。ですから、当たり前ですが実際にたいやきを焼くという使い方は推奨されていませんし、そのような使い方をして事故が生じた場合に責任をとることもあり得ません。

 同様にともえ庵も、プロが遊びとして挑戦したに過ぎませんので、真似をされることを止めはしませんが、その際に生じたトラブルについては何ら責任を負うことはできません。くれぐれもこのことについてはご理解ください。おそらく、この玩具で実際にたいやきを焼こうとするのは我々くらいだと思いますが・・。

■勝手な注文というか要望

 玩具メーカーさんがたいやきに着目して、その道具のミニチュアを作って下さったことは本当に素晴らしいことだと思います。

 ただ、一丁焼きのたいやき屋としては、一丁焼きのハシの形状が少し違っていることが気になりました。具体的には持ち手となる柄の角度です。本物の一丁焼きのハシは閉じた時には柄が並行になっているのですが、玩具のものは柄が開いており、それが原因で型の部分を大きく開くことができなくなっています。また、大きく開いた際にふたつのパーツの接合が外れやすのも弱点です。

 実際にたいやきを焼くなどということはともえ庵しかやらないと思いますので、機能性という意味での改善は必要ありませんが、よりリアリティを持たせるため、再度の商品化をされる際にはお汲み取りいただければと思います。

 もちろん、これは不満でもクレームでもありません。このような玩具を作って下さったことには感謝しており、実際に店の職人も皆が使った後のハシを欲しがっていました。素晴らしいものだけに、勝手に余計に期待してしまっている次第です。

■最後に感想です

 たいやきは楽しい食べ物だから面白いチャレンジも必要と考えるともえ庵の考えと、一丁焼きに関することなら何でも挑戦する店長の職人魂と技量により実現したこの挑戦、当初に考えた以上に難しいものでした。

 写真を周りの人に見せびらかすと、「売らないのですか」と尋ねられるのですが、かかっている手間を考えると、1匹700円くらいいただかないと採算が取れないので、あくまでイベント的な挑戦にしておきます。でも、楽しいので何かの折にはまた作って披露したいとは考えています。

 なお、もしご興味をお持ちで取材をしていただけるのであれば、平日の昼頃の時間であれば、取材用に焼くこともできると思いますので、店までお問い合わせください。

 冷静に考えるとあまり意味がないチャレンジの報告でしたが、店としては面白い挑戦だったと満足しています。長文にお付き合いいただき有難うございました。

 最後にもう一度動画です(同じものです)

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