“ほぼ草!(笑)”と驚かれる「よもぎ白玉たいやき」

 ともえ庵は、たいやきのシーズンの秋から春にかけて出している月替りたいやき、4月11日から5月9日の1か月間は「よもぎ白玉たいやき」を提供させていただいています。

 緑色が目立つ写真からもわかるとおり、本当にヨモギが濃いたいやきです。

以下に詳しく紹介します。

ヨモギを混ぜ込んだつぶあんとヨモギを練り込んだ白玉でたいやきを焼き上げます

■抹茶とヨモギは濃い方が美味しい

 日本の田舎では季節になるとヨモギを使って草餅を作ります。ヨモギは全国にあるのでおそらく全国のどこでも作られているのでしょう。新潟県の笹団子もヨモギを使ったものとして有名です。

 家庭でも作られる草餅や、評判の良い和菓子屋さんの草餅などヨモギを使った餅菓子をたくさん食べて気付いたのは単純なこと、「ヨモギが濃いほど美味しい」ということでした。乾燥したヨモギを粉にしたヨモギ粉を使うのではなく、アク抜きしたヨモギを葉を使っていることは前提です。でも、それさえ満たせればあとはヨモギを惜しみなく使って作った、濃いものが美味しいのです。

 これは、以前に抹茶のかき氷を食べ歩いた際に悟った「抹茶が濃い方が美味しい」に通じるものです。(参考記事:「食べて気持ちの良いかき氷 ~抹茶、自家製練乳、つぶ餡、基本のシロップの話~

 ですから、ともえ庵の「よもぎ白玉たいやき」は、たいやきにこれ以上ヨモギを入れるのは不可能、というところまで限界までヨモギを使ったものになっています。

■ヨモギについて

 ヨモギはキク科の多年草で、日本全国に自生しています。春になるとどこでも摘むことができるので、草餅(ヨモギ餅)の材料として使われている他、おひたしや天麩羅などの料理の素材としても使われます。また、お灸に使うモグサもヨモギから作ったものです。

 また漢方では生薬として用いられています。 “なんにでも効く万能薬”と言われており、内臓全般、冷え改善、止血、かゆみ止め、消炎・・・と本当にありとあらゆる効用があるとされているそうです。韓国で有名なのがヨモギを煎じて下半身を蒸す「ヨモギ蒸し」です。特に婦人病に良いと伝わっていますが、冷え性の改善などにも効果があるそうです。

 その他、フランスではヨモギの近縁種のニガヨモギを使った「アブサン」というリキュールが作られています。

 一部で栽培もされていますが、多くは自生しているものを採取して使用しています。食用にできるのは春の柔らかい葉で、固くなった茎などは取り除きます。アクが強いので天麩羅などの場合を除き、茹ででアク抜きをして使います。

■最初は「ヨモギ白玉」のたいやきのつもりでした

「よもぎ白玉たいやき」を作ろうと最初に考えたのは、白玉たいやきの白玉に粗く潰したヨモギを練り込むことでした。最初からヨモギ成分が濃いものを作ることが前提だったので、白玉に限界までヨモギを練り込みました。

 白玉粉にヨモギを混ぜ込むと、かなりの量を入れても薄緑色なのですが、これを茹でると鮮やかな濃い緑色になります。食べてみると、ヨモギの風味が強く感じられるものになりました。この「ヨモギ白玉」には甘みを入れていないので、つぶあんと一緒に食べると本当に美味しく、最初の試作で完成したと喜びました。

 ところが、この「ヨモギ白玉」を入れてたいやきにすると、あれほど強く感じられたヨモギの風味がかなり弱くなってしまいました。白玉に比べてはるかに多い量のつぶあんに風味を食われてしまったのです。決して不味くはないのですが、ともえ庵としてお客さんにお出しできる味ではありませんでした。

白玉粉にヨモギを混ぜて成形したもの。最初は薄緑です。
茹でると鮮やかな濃さの緑色になります。ヨモギの風味も強く、このままでも美味しいくらい。

■採算度外視でつぶあんにヨモギを混ぜ込みました

 もっと白玉に練り込むヨモギを増やそうとしましたが、考えてみればもともと限界まで練り込んでいるものを増やすことはできません。なので、白玉に練り込んだものと同じ粗く潰したヨモギを直接つぶあんに混ぜ込むことにしました。

 つぶあんに混ぜ込むことで、たいやきのひと口めからヨモギに触れることになります。ヨモギの風味が強すぎて味を崩す可能性があるため、今度は少ない量から始め、少しずつヨモギの割合を増やし、何度も試作しました。ところが、ヨモギを割合を増やしていっても、なかなか納得できる味にはなりません。とうとう業を煮やして、少しずつ量を増やすことを諦め、いきなり限界までつぶあんに混ぜ込んでみたところ、まさに狙っていた味に仕上がりました。そう、結局はつぶあんに対しても「ヨモギが濃い方が美味しい」だったのです。

 結果、白玉にもつぶあんにも限界までヨモギを入れることで美味しいたいやきができました、めでたしめでたし・・・・。残念ながら現実はそんなに簡単ではありません。それほどまでにヨモギを入れると、どう考えても採算が合わなくなるのです。商品として考えると、もう少しヨモギを減らして原材料費を抑えないと、損まではしませんが、売れても儲けの出ないものになってしまうことがわかりました。

 正直なところかなり悩みましたが、出した答えは「採算には目をつぶる」ことでした。ヨモギの量を減らして納得できない味にするくらいなら売らない方がいい、でも「よもぎ白玉たいやき」は月替りにふさわしい味なので、どうしても食べて欲しい。なら損をしないのなら、儲からなくてもお客さんに食べてもらおうと考え、昨年(2017年)の4月から提供を始めました。

つぶあんにも限界までヨモギを混ぜました

■大人気メニューになり、採算が合いました

 こんな風に始めた「よもぎ白玉たいやき」ですが、売り出してみると予想を超えた人気メニューになりました。美味さには自信があったのですが、ヨモギはやや地味な素材なので、時間をかけて知ってもらおうと考えていましたが、いきなりから多数の注文をいただき、何度も買って下さるお客さんがどんどん増えていったのです。

 それまで月替りたいやきでは、「紅玉りんごたいやき」が一番人気で、「広島レモンたいやき」がそれに迫っていたのですが、「よもぎ白玉たいやき」は両者を軽く抜くメニューになってしまいました。

 草餅(よもぎ餅)から味が連想しやすかったことや、インパクトのある写真が良かったのかもしれませんが、やはり採算を度外視してヨモギを入れたことが要因だと思います。素材が地味でも美味しいものは伝わるのだと納得しました。

 その結果、「よもぎ白玉たいやき」は、なんとか採算が合うメニューになりました。材料をまとめて仕入れることができたことや、仕込みを大量にすることができたことで原価や労務費が下がったからです。

■「ほぼ草!」に驚きました

 実際に食べたお客さんの評判も良く、インターネット上にも誉めていただく感想を見かけるようになったのですが、その中で驚いたのが、「『ほぼ草』と評判のよもぎ白玉たいやき」というツイッターでの書き込みです。

 時々、作っている側の想像を超えた表現をされるお客さんがいらっしゃいますが、この「ほぼ草!」という表現はその中でも一番のもの。簡潔さとインパクトに驚き、無断で恐縮ですが、キャッチフレーズとして使わせていただいています。

 5月からはかき氷が始まるので、夏限定の「あんずたいやき」など例外はありますが、毎月の月替りたいやきの提供はこれで一段落します。どのたいやきも他店にはないものと自負していますが、見た目も味もインパクトは一番の「よもぎ白玉たいやき」、ぜひお試しください。

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