うちで使っているつぶ餡は、厳密にはつぶし餡だという話は以前に紹介しましたが、今回はもう少し餡の素材と作り方について紹介しようと思います。
餡の素材であるアズキは、専門の卸問屋さんから購入しています。小麦粉や砂糖は、パン屋さん、ケーキ屋さんやうどん屋さん向けに小麦粉を卸している問屋さんがあり、うちでもそこと取引しているのですが、小豆は豆を専門に扱う問屋さんにお願いしています。
■「エリモショウズ」を使っています
使っているのは、エリモという品種です。
アズキは、ササゲ属に属する一年草です。ササゲ属にはササゲ種とアズキ種が含まれています。ササゲはアズキと違って粘りがないので餡にはなりませんが、茹でても皮が破れないので赤飯に使われています。
アズキ種の中には、粒が大きい大納言とアズキ(普通小豆)が含まれており、エリモはこのアズキの一種、エリモショウズ(小豆)とも呼ばれますが、語源は北海道の襟裳岬(えりもみさき)から来ているようです。
エリモは品質が良く、形と色がきれい、そして寒さに強いことから北海道で栽培され、普通小豆ではもっとも大量に生産されている中心的な品種となっています。
なお、一般的に小豆は低温に弱く霜害を受けやすい作物です。なんとなく北海道で作っているイメージから寒さに強そうに感じますが、もともとは京都府から兵庫県にまたがる丹波地方などが有力な産地で、低温に強い品種が北海道で栽培されるようになったようです。
ですので和菓子の世界では高級なアズキと言えば、丹波産の大納言。北海道産高級小豆とか、十勝産高級小豆という紹介がされているのも見かけますが、やや違和感をもってしまいます。北海道でも大納言は栽培されているのですが、エリモで作るつぶ餡で高級小豆を唄うのは、少なくとも現時点ではやや無理がある表現だと言えるでしょう。
とはいえ、このエリモは、うちのようにつぶし餡を作るにはぴったりの品種。アズキらしい香りや味があるので気に入って使っています。
■甘くない餡、そのために勇気を持って廃棄しています
ともえ庵のつぶ餡は、甘さをできる限り抑えて作っています。もともと糖度計を購入して、他のたいやきの有名店、和菓子店などの餡の糖度を把握し、それ以上に甘さを抑えたつぶ餡にしました。その際に生じる“日持ちがしない”というリスクを、仕込んだ餡は当日中に使い切り、残ったら廃棄することで解決してきました。
このあたりについては、以前のブログ記事「たいやきの餡 ~餡と砂糖の話~」をご覧になってください。
■餡の仕込み方について
餡は毎朝仕込んでいます。
以前、当店について紹介していただいたネット記事の中に「たいやきの焼き方は『クックパッド』を見て学んだ」との記載がありますが、これは完全に誤解です。確認はしていませんが、クックパッドには一丁焼きのたい焼きの焼き方は載っていないと思います。これは、取材に来られたライターさんに「餡の基本的な仕込みの手順は、クックパッドで勉強するところから始めた」とお話しした説明が上手く伝わらなかったためです。当店の説明不足について、反省し、お詫び申し上げたいと思います。
とはいえ、店を始めた当初、つぶ餡の糖度は決めたものの、アズキの炊き方がわからず、クックパットの方法を見て学んだのは本当です。ただ、糖度の設定や、炊き方の工夫など、その後に独自の工夫をかなり盛り込んだので、現在の仕込みの方法は当初とはかなり違ったものになっているはずです。
独自に工夫はしていますが、つぶ餡の仕込みの手順は極めて一般的です。アズキを洗いながら不純物(今どきのアズキは出荷前に機械でチェックしているのでほとんど入ることがありません)や欠けたアズキを取り除き、煮て灰汁を捨て、再度水を足して火にかけてゆっくりと膨らませる。こうしてできた生餡にグラニュー糖を加えて練り、豆を潰して仕上げています。
大まかには煮る時間を設定していますが、仕上げについては感覚が頼り。季節により水温が違うので、最終的には人間が味見をして常に同じ状態になるようにしています。
■やっぱり最初の餡が一番おいしい
こうして仕上がったつぶ餡は、甘さが抑えられている分、小豆の風味が引き立つ味わいになっています。
やはり以前のブログ記事「あんこが嫌いなお客さん」で紹介したように、他所では餡が食べれられないのに、うちでは食べるというお客さんも少数ではありません。また、お母さんに連れられてくる本当に小さなお子さんが、うちの餡を気に入ってくれているということもよくあります。
当日の餡しか使わない上に、餡の水分量に気を配っているので、どの時間に食べていただいても、風味があり、みずみずしいつぶ餡のたいやきを提供できていると思います。
でも、やはり厳密には餡が仕込み上がった直後、つまり開店直後のたいやきを食べて欲しい。より極上の風味を感じていただけると思います。
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